僕はカール・ルイスみたいに全力疾走で車が止まっている所へ向かった。やっぱり信じていれば願いが叶うんだ。神様ありがとう。僕の心はエイトビートで、バクバクバクバックンバックンクン、と喜びを表現していた。
「あっ、あの」
助手席の窓が開いていたので、ドキドキしながら話しかけてみた。きっと優しい人に違いない。さぁ、今から僕の旅が始まるんだ。
「あのさー、ここらへんに居酒屋ってない?」
予想外の言葉だった。
車の中には、顔をリンゴみたいに真っ赤にしたスーツ姿のサラリーマンが、四人乗っていた。窓から放たれる匂いは、猛烈に酒臭かった。
「居酒屋ですか・・・?」
「おう、それも安くてお洒落なとこ。どこかないの?」
「わかんないですけど」
「なんだ、使えないなー。というかこんなところで何やってんの?もしかしてヒッチハイク?若いねー。青春だねー。」
サラリーマンたちは馬鹿みたいに大笑いしていた。
なにがおもしろいんだよ。
「まさか、今時そんなことしても流行んないですよ」
僕は冷静を装い答えた。
「だよねー。じゃあバイナラバイナラ」
そうぬかすと、アンポンタンなサラリーマン達は車を走らせて行った。マフラーから吐き出される煙は、実はあいつらの酒臭い息とオナラが成分じゃないかと思うほどだった。ひどいもんだった。
「てめぇら、事故起こして全員死ね!バカ!アホ!マヌケ!万年平社員が!」
静かな夜の世界に僕の声はこだました。