両親が寝静まった頃、僕は、十七歳の頃に、ダンサーを志して三十五ドルだけを持ってニューヨークに飛び出したマドンナのように、僕も何も持たずに家を飛び出した。まぁ、親が心配するといけないので、机の上にはそっと書置きをしておいた。
僕は十七歳なんだ、って。
家から飛び出した僕は、まずその足で近所で一人暮らしをしている高橋先輩の家に向かった。高橋先輩は年が僕よりも四つ上だけど、未だに浪人生だ。今年で三浪目なんだけど、それは高橋先輩が医学部を志望しているからの結果であり、そもそも、高橋先輩の家は代々続いている医者一家で、高橋先輩も医者一家の家系らしく例外なく医者になることを親から余儀なくされていた。まぁ、簡単に言うと、親の敷いたレールに乗っているってやつだ。でも、高橋先輩は医者になる気なんて全くなかった。それよりも、何浪してでもいいから医学部に入り、家を継いでほしい親の熱意を逆手に取り、浪人を、何もしなくても金は貰えるしやらなければいけないこともないしパラダイスだぜ、なんて言うような放蕩息子だった。
この台詞の通り、高橋先輩はとんでもなくアウトローの人だった。でも、僕はそんな高橋先輩が好きだった。
「先輩行きましょう」
僕は先輩の部屋に入るなり言った。
先輩は上半身裸で、トランクス一枚の格好だった。もちろん勉強をしている形跡なんて微塵もなく、テレビ画面にはアダルトビデオが流れていた。
「よし、行くか」
先輩はどこへいくかもわかってないのに威勢よく返事をした。
僕と先輩はハイテンションのまま夜の街に飛び出した。
ハイテンションで飛び出したのはいいのだけど、街は完全にひっそりとしていた。それもそのはずだ。時間をもう深夜2時過ぎだったからだ。だけど、僕と先輩にはそんなこと関係なかった。とりあえず、コンビニに行き、ダンボール下さい、と言ってダンボールをもらい、それをスケッチブックサイズに切り、そこに黒のマジックペンで大きく書き込んだ。
どこかへ、って。