拉致問題での孤立心配だ 6カ国協議
北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議が正念場を迎えている。
8日から北京で再開された同協議で、議長国の中国が北朝鮮の核放棄に向けた「初期段階措置」についての合意文書案を提示した。
北朝鮮が寧辺など核関連施設の稼働を2カ月以内に停止し、その見返りに5カ国はエネルギー支援などを行う。非核化や経済支援、日朝や米朝関係正常化などの作業部会を設け、専門家レベルの協議を進める提案が盛り込まれている。北朝鮮は受け入れる方向だという。
昨年12月の前回協議では、北朝鮮が米国による金融制裁の解除を主張し、核問題の協議には入れなかった。
今回は、事前に米朝両国が協議し、大筋で合意した内容を基に、議長国が「たたき台」を示すことができた。それを踏まえ、初期段階措置の中身について具体的な交渉が行われている。
日本代表が「分水嶺(れい)」と表現したように、今回の協議を境に、非核化が実質的に前進することを期待したい。
しかし、こうした展開は苦い体験を思い起こさせる。
1994年の米朝枠組み合意で、北朝鮮は、軽水炉原発の建設と重油供給を条件に核開発凍結を約束した。だが、その裏でウラン濃縮計画を進め、枠組み合意は破たんした。それが昨年の弾道ミサイル発射、核実験へとつながった。
北朝鮮に核開発の時間を与えたことで、アジアの安全保障上の脅威は格段に大きくなった。同じ失敗は許されない。
初期段階措置が核放棄への確実な一歩となるよう、逆戻りできない道筋を整える必要がある。再び約束をほごにされないよう、国際社会による「対話と圧力」の仕組みも生かしておきたい。
気になるのは見返りに対する各国の温度差だ。韓国は食料や肥料の支援再開に前向きと伝えられる。中国やロシアも、もともと北朝鮮には寛大な姿勢だ。
米国も対北朝鮮政策を軟化させた。その中で、日本が孤立する懸念がある。
日本は核と拉致問題の包括的解決を原則とし、安倍晋三首相も「拉致問題の進展がなければ支援を行うことはできない」と繰り返している。
日朝関係の作業部会ができれば、そこが拉致問題の協議の場となろうが、「拉致問題は解決済み」と主張する北朝鮮との交渉は困難が予想される。
拉致問題に進展がないまま、各国が核凍結の見返り支援に踏み切ることになれば、日本は難しい立場となる。
原則論に固執して6カ国の枠組みを壊してしまえば元も子もない。まずは米国との連携をいっそう緊密にし、それをてこに拉致問題を含めた包括的解決を、中国、ロシア、韓国に働き掛け、理解と協力を求めていくしかないだろう。
拉致問題の解決を最優先課題と位置付ける安倍政権の踏ん張りどころだ。
=2007/02/10付 西日本新聞朝刊=
2007年02月10日00時53分
[拉致問題での孤立心配だ 6カ国協議] / 社説 / 西日本新聞