社説:拉致問題 国際社会の圧力追い風にせよ | trycomp2のブログ

社説:拉致問題 国際社会の圧力追い風にせよ

日本人拉致を含めた北朝鮮の卑劣な人権侵害に対し、国際社会の批判が一段と高まってきた。

 欧州連合(EU)が国連総会で人権問題を扱う第3委員会に北朝鮮の人権状況を非難する決議案を提出した。

 拉致被害者の曽我ひとみさんの夫ジェンキンスさんが手記で北朝鮮で暮らすレバノン、タイ、ルーマニアの女性の存在を指摘した。拉致されたというタイ人女性については母国で調査が始まった。

 こうした動きは、拉致が国際的に広がりを持つ問題になったことを意味する。

 日本人拉致に関しては、2度の小泉純一郎首相の訪朝によって蓮池薫さん、地村保志さん一家と曽我ひとみさん、ジェンキンスさん夫婦と娘2人の計13人の帰国や訪日が実現した。

 しかし、何人かの拉致被害者の生存情報があるにもかかわらず、北朝鮮の対応には全くといっていいほど誠実さが見られない。

 北朝鮮が横田めぐみさんのものだと言っていた遺骨が日本で鑑定したところニセ物であることがわかり、日本人の北朝鮮への風当たりは厳しさを増している。

 拉致被害者の家族などからは、北朝鮮への経済制裁を求める声が高まっている。背景には事態が進展しないことへのいら立ちがある。今月初めに約1年ぶりに行われた日朝の政府間対話で拉致問題に前進が見られなかったことにも落胆したはずだ。

 EUの非難決議案は、日本人拉致を「強制的失踪(しっそう)という形の外国人拉致に関する未解決の問題」と指摘し、強制収容所や女性の人身売買、脱北者への虐待などを「組織的、広範で深刻な人権侵害」と指弾している。決議案は日本を含め35カ国で共同提案された。

 北朝鮮の人権問題については、ジュネーブの国連人権委員会で3年連続で非難決議が採択されている。人権委員会の加盟国が53カ国なのに対し、国連総会には全加盟国の191カ国が顔をそろえる。多国間で議論されれば、「拉致は日朝間の問題」とする北朝鮮の主張は崩れ、問題解決のため正面から国際社会と向き合うことを迫られるはずだ。

 第3委員会では21~23日に採択され、国連総会の本会議でも年内には採択されるとみられる。決議の採択は、国際社会で北朝鮮包囲網が構築されるようなものだ。こうした動きが6カ国協議や日朝協議にいい影響を及ぼしてほしい。

 一方、拉致問題に関して政府はタイ政府に積極的に協力すべきだ。タイ人の女性の拉致が確認されれば、日本と連携して救出運動を進める必要がある。

 気がかりなのは、韓国の盧武鉉(ノムヒョン)政権が拉致問題の解決に消極的なことだ。韓国には500人近い拉致被害者がいるのに、政府が救出に積極的に動いているようには見えない。問題解決には日韓の連携が不可欠である。韓国政府の積極的な対応と関係国との協力を求めたい。

 国際社会の関心の高まりを、問題解決の追い風にすべきだ。

毎日新聞 2005年11月13日 0時14分
MSN-Mainichi INTERACTIVE 社説