温暖化防止のためにアジア開発銀行は自然エネルギーへの融資を

「地球温暖化が進行すれば最大で世界のGDP20%分の経済損失が発生する。そして、それは世界のGDP1%分の対策を講じれば回避することができる」。2006年10月に発表された「スターン・レポート」は世界に温暖化問題に取り組む経済的なメリットを知らせた。『不都合な真実』の中でアル・ゴア氏も紹介しているように、国際政治が具体的な政策を講じれば、温暖化による影響を回避することができるのだ。地球温暖化を防ぐために二酸化炭素などの温室効果ガスを出さないエコロジーなライフスタイルが広まっている。しかし、温暖化問題は一人ひとりができることを実践していくことと同時に、地球規模の視点を持つ必要がある。
いま、アジアの途上国では、アジア開発銀行(ADB)などの多国間開発金融機関(MDBs)の支援の下、温室効果ガスを大量に発生させる石油・石炭採掘や石油・石炭発電所へのプロジェクトが急激に増加している。これらのプロジェクトは、大量のCO2を排出し、温暖化の危機を促進させるばかりか、環境汚染や地元住民の人権侵害をも引き起こしている。
アジア開発銀行とは、1966年に日本政府の提唱で設立された多国間開発金融機関である。意思決定は出資比率に比例する。日本政府は米国政府と並んで15.7%の表決権を持ち、歴代の総裁はすべて日本人だ。日本政府による多国間開発銀行への出資金は、約2000億円にものぼる。アジア開発銀行が行ったプロジェクトの影響について、日本政府が責任を求められるのは当然のことと言える。そして、私たちが納めた税金の使途がどのようになっているかという視点に立てば、私たち市民にとっても他人事ではないのだ。
現在稼働中のタイのメー・モウ石炭発電所では、約3万人が立ち退きを迫られ、数千人が発電所から排出される硫黄酸化物によって呼吸困難に陥り、約200人が死亡した。そして、毎年約400万トンのCO2を排出することになった。アジア開発銀行は、20年のもの間、年間約3億5000万ドルの融資を確約していた。
また、アジア開発銀行が1億ドルの融資と2億ドルの政治的リスク保証を検討しているプロジェクトとして、バングラディッシュのフルバリ石炭採掘事業がある。バングラディッシュの警察組織は、石炭採掘事業に反対する現地住民のデモンストレーション中に、無差別に発砲し、青年を含む5名を殺害した。2007年4月、現在操業開始許可がおりていないにも関わらず、アジア開発銀行は融資続投を検討している。
このような人権侵害をともなうプロジェクトが推進される理由として、アジア開発銀行によるエネルギー政策の基本方針に対する見直し不足がある。アジア開発銀行のエネルギープロジェクト(2000~2006年)において、石油・石炭プロジェクトへの投資割合は全体の26%を占めている。その一方で、再生可能・自然エネルギープロジェクトへの投資割合は全体の4%しかない。石炭発電所や水力発電所など、大規模な電力を供給することは必要だが、大規模発電所の設立には巨額の出資と利潤が絡み、住民の意見が圧殺されやすい側面もある。
2007年はアジア開発銀行のエネルギー政策のレビューの年である。世界の23億人がエネルギーにアクセスできていないという状況だ。そのような状況を打開するためには、地域住民がアクセスでき、コントロール可能な再生可能・自然エネルギーの開発へ切り替えていく必要がある。
2005年のG8サミット(英国)で採択されたグレンイーグルス行動計画では、国際金融機関がよりクリーンで効率的なエネルギー政策を達成するためのエネルギー投資枠組みを策定すること、再生可能エネルギーおよびエネルギー効率の投資を増大することが求められた。また、2008年には北海道・洞爺湖でG8サミットが開催される。ポスト京都議定書の枠組み交渉が加熱する中、G8サミットで議長国をつとめる日本政府のリーダーシップが世界から注目されている。地球規模の対応策が必要とされる中、日本政府はアジア開発銀行の政策においても、積極的に地球温暖化への対策を講じるリーダーシップを発揮する必要がある。
2007年5月4日から7日まで、アジア開発銀行の年次総会が京都で開催される。5日と6日にはアジア開発銀行のプロジェクトに疑問をなげかける市民フォーラムとワークショップが開催される。温暖化とお金の流れについて、世界の視点から考えてみてはいかがだろうか。
温暖化防止のためにアジア開発銀行は自然エネルギーへの融資を - OhmyNews:オーマイニュース “市民みんなが記者だ”