「よど号」妻:頻繁にウィーンに 誘拐容疑で逮捕状請求
欧州から松木薫さん(失跡当時26歳)と石岡亨さん(同22歳)が拉致された事件で、2人が失跡した80年代に日航機「よど号」乗っ取り事件の実行犯メンバーや妻、北朝鮮工作員が中立国であるオーストリアの首都ウィーンに頻繁に出入りしていたことが分かった。警視庁公安部は13日、2人に対する結婚目的誘拐容疑でメンバーの妻の森順子(54)、黒田(現姓・若林)佐喜子(52)の両容疑者の逮捕状を請求した。他に拉致にかかわったメンバーや工作員がいないか解明を図る。
「マドリードで出会った人と鉄道で東欧を回り一緒にウィーンにいる。これから4人でモスクワに行こうと思う」
石岡さんは80年6月3日の消印で、ウィーンから北海道に住む親族らに便りを出したのを最後に消息を絶った。
公安部は石岡さんが絵はがきに記した4人は自分自身と松木さん、森、黒田両容疑者で、森容疑者がマドリードで知り合った石岡さんと松木さんを「ウィーンで婚約者に会わないか」と誘ったと見ている。
北朝鮮工作員らは80年代当時、ウィーンの北朝鮮大使館などで旅券を持ち替えて東西を行き来していたとされる。両容疑者も北朝鮮と西側諸国を結ぶ玄関口の役割を果たしていたウィーンに2人を連れ込み、北朝鮮に渡った疑いが強い。
北朝鮮は04年、松木さんら2人を「スペイン、ユーゴスラビア、旧ソ連を経由し80年6月7日に連れてきた」と日本側に説明。石岡さんのハガキは「マドリードで書いた手紙を工作員がウィーンで投かんした」と報告した。
これに対し捜査幹部は「ウィーンでの活動が表面化するのを恐れた末の弁明だ」と指摘。「それだけ当時のウィーンには北朝鮮にとって重要な工作拠点があったはずだ」としている。
ウィーンには北朝鮮に渡航してグループに合流し、6月5日に旅券法違反(渡航制限)容疑で逮捕された赤木邦弥容疑者(52)が82年9月から85年後半まで滞在。同時期には岡本武(既に死亡)、魚本(旧姓・安部)公博(59)両容疑者=ともに国際手配=がいたことも分かっている。80年代後半にはメンバーの妻が住民登録をしたり、北朝鮮の外交旅券で滞在するなどしていた。
◇「一歩前進した」松木さんの姉会見
拉致された松木薫さんの姉、斉藤文代さん(61)=熊本県菊陽町=は13日、県庁で会見した。この日は松木さんの54歳の誕生日。斉藤さんは「時間がかかったが、一歩前進した気持ち。薫の誕生日に合わせて配慮していただけたのかと思う。『また頑張ろう』という気持ちになった」と話した。逮捕状が請求された2容疑者に対しては「日本で罪を償い、何もかも話して認めてほしい」と訴えた。【谷本仁美】
毎日新聞 2007年6月13日 15時00分
「よど号」妻:頻繁にウィーンに 誘拐容疑で逮捕状請求-事件:MSN毎日インタラクティブ