拉致問題:金英男さん会見 北朝鮮のしたたかな戦略 | trycomp2のブログ

拉致問題:金英男さん会見 北朝鮮のしたたかな戦略

 【ソウル中島哲夫】横田めぐみさんの夫とみられる金英男(キムヨンナム)さんは29日、北朝鮮・金剛山での韓国共同取材団との会見で、「拉致されたのではない」と言い切った。信じがたいという反応が韓国でも多いが、母・崔桂月(チェゲウォル)さんとの28年ぶりの対面と会見を一連の流れとしてみると、北朝鮮のしたたかな戦略が読み取れる。その主な標的は日本であり、日韓離反も狙っているようだ。

 前日の「南北離散家族再会」行事の際、崔さんは感動の涙を流し続けた。「もう死んでも思い残すことはない」と喜ぶ老母をだれも批判できまい。韓国メディアは、この感激を中核にすえて報道した。

 「これは日本へのメッセージにもなる」。北朝鮮から亡命したものの、同国の情報に詳しい微妙な立場のため身分を隠している男性は、毎日新聞にそう語った。北朝鮮を追及し、圧力を加えるよりも、韓国政府のように融和的な方針で臨めば良い結果がもたらされる、というメッセージだ。

 また、金さんが会見で、めぐみさんの「病気と自殺」の経緯を説明し、日本の対応を非難したのは、北朝鮮が「この問題に終止符を打つ」ための戦略だと、同じ男性は語る。

 北朝鮮が日本との間で拉致問題を解決する上で最大の障害は、めぐみさんと父母の横田夫妻への日本世論の支持だ。これを崩そうと北朝鮮当局者が何を言っても効果がないので「英男カード」を切ったとの分析だ。

 こうした戦略は、直接日本に対しては逆効果になる可能性もある。しかし、韓国政府や世論が北朝鮮の願う方向に傾けば、日本を動かしたり、少なくとも日韓の間にクサビを打ち込める。北朝鮮がそれを狙っているという見方には、強い説得力がある。

 韓国政府は金さんと肉親の再会を「政治利用しない」と北朝鮮に約束した。これは、拉致問題で北朝鮮に強い姿勢をとる日本の手法が「拉致問題の政治利用」だと前提にしている。

 韓国紙の社説や論評には「日本は拉致問題解決より政治的圧迫に重きを置いている」「拉致問題を対北支援とつなげて対応せよ」「北朝鮮に引きずり回されてはならない」といった見解が混在している。北朝鮮の戦略が奏功する可能性はあると言える。

毎日新聞 2006年6月29日 21時13分
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