「北」日本語アナは拉致濃厚失踪者か 政府が独自鑑定
■朝鮮語かなり下手
昭和63年に日本海で行方不明になった鳥取県米子市の矢倉富康さん=失跡当時(36)=と、北朝鮮の放送局の日本語アナウンサーが酷似していることが分かり、同一人物である可能性があるとして、日本政府が独自に写真鑑定などを進めていることが13日、分かった。矢倉さんは、拉致被害者を調べている「特定失踪(しっそう)者問題調査会」(荒木和博代表)が「拉致濃厚」とする1人。政府は、分析結果によっては、外交ルートを通じて北朝鮮側に情報を照会する方針だ。
調査会によれば、矢倉さんは元エンジニアで、63年8月2日、日本海へ1人で漁に出たまま消息を絶った。調査会は平成15年1月、北朝鮮による拉致の可能性を捨てきれないとして矢倉さんの名前や写真を公表。今年6月には、漁船に不自然な衝突痕があったことなど新たな情報が得られたため、「拉致濃厚」に切り替えた。
一方、矢倉さんに似た男性の写真が撮影されたのは今年3月15日。平壌・高麗ホテルで訪朝した日本人らとともに撮影された。調査会は7月上旬に写真を入手した。調査会によると、男性は、訪朝した日本人らの通訳として応対、朝鮮中央放送委員会に所属する日本語アナウンサー「慎範(シン・ボム)」と名乗ったという。
面会した1人は、「日本語はネイティブだが、朝鮮語はかなり下手だった」と証言。「『日本人か?』とたずねたが、答えなかった」と話しているという。
写真については、北朝鮮側が横田めぐみさん=拉致当時(13)=のものとして提供した遺骨を「別人のもの」と鑑定した東京歯科大の橋本正次教授(法人類学)が鑑定。その結果を踏まえ、調査会は7月9日に「男性は矢倉さんである可能性が高い」と発表した。橋本教授は「顔や身体の特徴が一致、酷似しており、矛盾点がほとんどない。(写真の男性は)矢倉さんと同一人物である可能性が極めて高い」としている。
調査会とは別に、政府も写真による顔の鑑定や、アナウンサーの肉声の鑑定、平壌で撮影された写真に合成など不自然な点がないかなど多角的な鑑定に着手。鳥取県警など捜査当局は、無人で見つかった矢倉さんの漁船に残されていた衝突痕などを注視し、周辺海域での船舶航行など、当時の状況や情報の洗い直しを進めている。
一方、矢倉さんの家族は今月下旬にも、地元の海保や、鳥取県警に被疑者不詳のまま国外移送目的略取・誘拐罪で刑事告発する方針。海上での失踪事案のため、一次捜査は海保側が中心となって行われる見込み。
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