よど号妻に逮捕状請求、拉致直前知る証言者
80年に欧州で失跡した石岡亨さん(失跡当時22)と松木薫さん(同26)の北朝鮮拉致事件で、警視庁公安部は13日午前、「よど号」ハイジャックメンバーの妻、森順子(よりこ)(54)、若林佐喜子(52)=旧姓・黒田=両容疑者について、結婚目的誘拐容疑で逮捕状を請求した。
偶然にも双方の接点に立ち会い、事件解明の鍵を握ることになった証言者たちは、複雑な思いで事件を振り返る。
両容疑者に石岡さん拉致の疑いが強まったのは、失跡直前のスペイン・バルセロナの動物園で3人で撮った写真が90年代に見つかったことがきっかけだった。撮影者は、当時、石岡さんと欧州を旅行していた友人の男性(49)。
80年4月、列車の待ち時間に訪れた動物園で偶然、両容疑者に会った。「欧州に留学中で、バルセロナに旅行に来た」と話していた。記念写真を撮ろうというと、気が乗らない様子だったが、石岡さんと3人でベンチに座ってもらい、この男性が撮影した。石岡さんとは1カ月後に再会する約束をしてその後別行動をとったが、落ち合う約束をしていたホテルに、石岡さんは現れなかった。
写真は両容疑者と石岡さんの接点を示す動かぬ証拠となった。だが、北朝鮮が02年に出した調査結果で石岡さんの死亡を伝えたことを知り、「あの写真が石岡さんを苦しい立場に追い込んだのかもしれない」と今も悩む。
「松木さんたちとウィーンに行くんだけど、あなたたちも行かない」。当時、妹と2人で欧州を旅行中だった女性(57)は80年5月、マドリードで森容疑者に誘われた。
日本人が集まる安宿で森容疑者らと知り合い、同容疑者らが借りていたアパートに遊びに行くようになっていた。アパートには石岡さんと松木さんも来ていて、毎晩のように一緒に夕飯を食べ、トランプやドミノゲームを楽しんでいた。
ウィーン行きの誘いは、飛行機代がないことを理由に断った。だが、「妹は行きたがっていた。強く誘われたら行っていたかもしれない」と振り返る。03年、テレビの取材でスペインを再訪し、見覚えのある安宿まで来た時、石岡さんたちの姿が浮かび、たまらず涙がこぼれた。
92年に警察の事情聴取を受けて拉致の疑いを知った時、事情を知る自分も誰かに狙われている気がして夜道を歩けなくなった。それでも捜査や取材にはできる限り応じてきた。「あの時、スペインで何があったのか、証言できるのは私しかいないから」
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