【グローバルインタビュー】北朝鮮は予期しないワナを仕掛ける | trycomp2のブログ
ニューヨーク・フィルハーモニックの平壌公演について、米国務省、国防総省で朝鮮半島問題を担当、「北朝鮮の交渉戦略」の著者として知られるチャック・ダウンズ氏に見解を聞いた。(ワシントン 有元隆志)
われわれの社会は、経験豊かな外交官でさえ、北朝鮮が合理的な国家になってほしいと願っている。ニューヨーク・フィルハーモニックは米国文化の至宝ともいうべき存在で、われわれは抑圧された北朝鮮の人々に演奏を聴く機会を設けたいと望んできた。だが、明白なことは金正日総書記の目的は体制強化であり、人権抑圧から人々の目をそらすことにある。絶対的な権力を補強するために政治宣伝があるのだ。
このようなリスクがあるとしても、米国がニューヨーク・フィルハーモニックを平壌に送ったのは、公演が北朝鮮の新たな開放につながればとの希望を持っていたからである。もっとも、北朝鮮との交渉で学ぶべきだったのに学んでこなかったことは、米国が期待したものよりも常に見返りは少ないということだ。
北朝鮮はわれわれが予期しないような“わな”をしかける。例えば、1968年に北朝鮮兵士が韓国大統領暗殺を狙って青瓦台襲撃未遂事件を起こした。ゲリラ部隊がソウル市内に入り、銃撃戦で多くの韓国人が死亡した。しかも、予想すらしなかったのは、北朝鮮がこの暴挙に続いて、(その2日後に)米海軍の情報収集艦プエブロ号を、公海上で拿捕(だほ)したことだった。人的影響は少なかったものの、戦略的衝撃は大きかった。北朝鮮は自由社会の最強国である米国から、彼らの目からみればわずか80数人を救う見返りとして、謝罪を勝ち取った。この事件は、今日まで続いている北朝鮮の挑発行為のひとつに過ぎない。
この2月23日に北朝鮮軍の兵士は、自動車を日本からロシアに運ぶ途中だったロシア船に乗り込んで、北朝鮮の港に連行した。北朝鮮が主張する領海内に不幸にも入ったと思われたのか、この海賊行為に対する関心はほとんど払われなかった。
見せかけの開放が祝われている一方で、北朝鮮は過去の核開発について報告する責務を遅らせているうえ、北朝鮮国内にいる拉致被害者の救出を何ら進展させていない。
「北朝鮮が北朝鮮であることに変わりない。ドボルザークが演奏されることで、すべてを帳消しにすべきだとは思わない」とのライス国務長官の発言は、「公演のマイナス面は全くない」というヒル国務次官補(東アジア・太平洋担当)発言よりも、はるかに賢明な観察といえるだろう。、
外交官の仕事は、北朝鮮が普通の国のように行動するという楽観的な印象を振りまくために大がかりなショーを後押しすることではない。むしろ彼らの仕事は、北朝鮮に対して、世界の安全保障に与える影響に関し責任を持つよう迫ることだ。
■チャック・ダウンズ氏 米国防総省の東アジア地域問題部次長など、1990年代に同省と国務省で朝鮮半島問題担当のポストを歴任した。著書に「北朝鮮の交渉戦略」などがある。
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