日本人妻 忘れないで 『里帰り』再開 親族ら切望
五日からモンゴルで始まる六カ国協議の日朝作業部会。拉致問題の進展が期待されているが、在日朝鮮人の帰国事業で北朝鮮に渡った日本人妻の親族らは、複雑な思いで見つめている。日朝関係の悪化から日本人妻の「里帰り」は七年前に中断し、多くは消息さえ分からない。親族らは「人道問題として里帰り再開を」と望みをつなぐ。
北朝鮮の日本向けの日本語ラジオ放送「朝鮮の声」が七月、二〇〇〇年九月に日本人妻第三陣で里帰りした安田黎子さん(75)の肉声を流した。同月十六日から三日間連続で約十分ずつ、「朝鮮の社会主義制度が世界一」と題し「何不自由なく暮らせるようにしてくれた」と金正日総書記らをたたえた。その一方で、里帰りのおかげで当時九十歳の母親と対面できたことも話している。
朝鮮の声放送に詳しい関係者によると、日本人妻の肉声放送は珍しく、さまざまな憶測を呼んでいる。二〇〇〇年に安田さんが里帰りした時に面会した東京都調布市の妹(70)は「喜んでもらえたが、それ以来何の連絡もない」と言う。放送について「どういうことか皆目見当がつかない。元気でいてくれればいいけれど」と心配していた。
安田さんの肉声が流れたことについて、在日本朝鮮人総連合会関係者は「日本人妻の里帰りを日朝間で協議しようということだ」と述べ、膠着(こうちゃく)した日朝関係に対する北朝鮮側のメッセージと解説した。だが、今回の日朝作業部会で里帰り問題がテーブルにのる気配はない。
川崎市に住む田代かず子さん(62)は〇三年夏を最後に、北朝鮮に暮らす姉からの手紙が途絶えている。「私たち親族は北朝鮮で(姉ら日本人妻が)どんな状況にあるのか知りたい。政府は人道問題としての日本人妻の里帰りを忘れないでほしい」と話した。
<メモ>日本人妻里帰り 1959年から84年までに日朝両国の赤十字間の協定に基づき在日朝鮮人やその家族約9万3000人が北朝鮮に渡り、うち約1800人が日本人妻とされる。日朝両赤十字の合意で、97年11月に第1陣15人、98年1月に第2陣12人、2000年9月に第3陣16人が一時帰国した。現在は、拉致問題による対北朝鮮世論の悪化などで中断している。
東京新聞:日本人妻 忘れないで 『里帰り』再開 親族ら切望:社会(TOKYO Web)