【被害者家族に聞く】どうする拉致 「時間がない」「教育現場で取り上げて」 | trycomp2のブログ

【被害者家族に聞く】どうする拉致 「時間がない」「教育現場で取り上げて」

 横田めぐみさん=拉致当時(13)=が北朝鮮に拉致されてから30年が経った今年、米国は核問題をめぐって北朝鮮に歩み寄り、テロ支援国家指定の解除へと動いた。同盟国の揺らぎが被害者家族に大きな共振を引き起こす中、めぐみさんの父、滋さん(75)が結成から10年間務めた被害者の家族会代表を退き、田口八重子さん=拉致当時(22)=の兄、飯塚繁雄さん(69)に交代した。進む高齢化。進展しない拉致問題。「私たちには時間がない」と訴える親たちを、若い世代の被害者家族はどんな気持ちで見つめているのか。めぐみさんの弟で家族会事務局次長、拓也さん(39)と、田口さんの長男、飯塚耕一郎さん(30)に聞いた。(尾西央行)

 ■懸念される親たちの体調…「ボロボロになって、待っても会えないなんて」

 --それぞれのお父さんが家族会の代表を退任、就任なさいました

 拓也さん「まずは飯塚新代表に、『体あってなんだ』ということを伝えたい。うちの父のように体を壊して倒れ、入院してはどうにもならない。活動のほかに自分の生活や時間、仕事もあり、無理をしないことが大切。『八重子さんを取り戻せてよかった』となるまで待っていてあげるという大きな『仕事』がある。うちの父もそうだが、その仕事を一番と考え、他は多少犠牲にしてでも、待って抱きしめてあげる仕事を実現させるためにみんな頑張らないといけないと思う」

 耕一郎さん「他の家族も含め、親の体調はすごく心配です。代表に就任したばかりだからある程度は仕方ないけれど、(父の)スケジュールがものすごい。年が明けたら週に1日は、仕事も何にもせずに休んで下さい、と言っている。うちの親父も70歳近くになるので、自分のペースを守って体調管理をした上で動いてほしい。滋さんも、活動が入るとは思うが、代表の激務から外れて少しはゆっくりしていただければなと思う。めぐみさんが帰ってくるまで健康でいらっしゃることが一番重要なのです」

 拓也さん「家族会が発足して10年。人によっては30年以上、40年近く待っている。今までこれだけ(取り戻せないという)悔しい思いをして、体をボロボロにして、結局会えなかった、となったら、自分もくやしいしやりきれないが、被害者が帰ってきたときに『ただいま』と言う相手がいなくなる。それは例えようのない悲しみだ。自分の体は自分だけのものじゃなく、『お帰り、辛かったね』って抱いてあげるためにある。帰ってくる人たちの体でもあるんだってことを考えてほしい」

 耕一郎さん「ものすごくこわいですね。想像を絶することだ。『ただいま』って言えないなんて…」

 ■若い世代への期待…「感受性強い。知ってもらえる機会さえあれば」

 --米国によるテロ支援国家の指定解除が今年のキーワードのひとつでした

 拓也さん11月の家族会や議連、首相の訪米時には、今すぐにでも解除されるんじゃないかという心配があった。ヒル国務次官補などを中心に『年内にはこの問題が全て解決する』って話になっていたが、今のところは解除されてないし、ヒル氏も『年内の6者協議ができない』『核の問題の解決は今年は難しい』など、言葉だけを捉えれば彼らの当初の目論見が甘かったというか、日本の政府や家族会、(支援組織の)救う会が言い続けた『北朝鮮は、こちらが譲歩すれば向こうも譲歩する、というような相手ではない』という見方が正当化されてきている」

 耕一郎さん「北朝鮮に対して融和路線をとった国で、それが結果オーライとなったところはないと思う。北朝鮮と米国は『着地点』を下げつつあるように思うが、我々がすべき事は、踏ん張ってその着地点のハードルを下げないということだ。ハードルが高い位置にあることで『北朝鮮はやっぱり約束を守れなかった』となる」

 --若い世代に対するアピールも重要になってくるのでは

 耕一郎さん「東大で2回、講演させていただいたことがあるが、拉致について何も知らない人が目立った。でも、感受性がとても強く、言えばそのまま吸収して自分なりに考えてもらえる」

 拓也さん「私もそれは思う。話す機会さえ与えて頂ければ、大学生や高校生、中学生というのは、我々と同じ世代の視点で拉致を捉えてくれる。中学生に話すと、自分たちの親が僕たちのことを愛してくれていたんだってことの発見や、自分たちと同じときに(めぐみさんは)拉致されたんだ、ということを直感的に感じ取って自分のこととして受け止めてくれる。だから、世界的なアーティストがエイズの撲滅キャンペーンなどを展開しているが、もし仮に若い世代に人気のあるロックバンドなどが、若者に拉致問題を訴えてくれる機会があれば、私たちが全国を駆け回って1000回講演するよりも、1曲で伝えられることの方が大きいと思う。そういうものにすがれるならいいな、と思うことが多い」

 耕一郎さん「多分、若い人たちには拉致問題を考える機会がないんだと思う。だから、東大講演のときでも言えばちゃんと響く。内閣府の拉致担当の方にもお願いしたのだが、教育の現場で拉致問題を取り上げてもらうことはできないのか。多感な彼らに拉致問題を考えるきっかけが身近にあればと思う」

 ■日本政府の対応…「やはり遅い」

 --状況が動かない中、被害者家族は今後、どんな活動をすべきでしょう?

 拓也さん「もう地道な活動しかない。山ほど選択肢があって選べる訳じゃなくて、限られた機会に、常に同じことしか言えない。こういう問題があるということを言い続けていくしかなくて、変化球はない。もう本当に困っている。政治の問題じゃなくてただ『お母さんやお姉さんや子供を返してくれ』って、それだけのことなんです」

 耕一郎さん「私たちはひたすらすみません、理解をして下さい、広めて下さい、署名をして下さい、助けて下さいって、そこを単純に、もう耳にたこができるくらいに言うくらいしかできないし、それ以外に何かをする術はない」

 --日本政府の対応についてどう考えますか

 拓也さん10月末に福田首相とお会いしたときには『(政府と家族は)一体化している』という話だった。あなた達の気持ちと一緒だと。その言葉は信じたいし、自民党総裁選の期間中も『この手で解決する』とおっしゃっていたので、もうそこに賭けるしかない。しかしこれだけ時間が経っていると、歩みの遅さをひしひしと感じる。(核問題をめぐって米朝関係に変化がある中)拉致では我々が当事者。それは譲れないんだということを、福田さんがどれだけ声に出してくれるかが大切。首相の言葉を信じるという点では、もう少し感情を込めた(他国への)主張があるべきだという気持ちは強い。それと同時に、(日本と同盟国の)米国は北朝鮮に対して譲歩し続け、日本が『テロ支援国家指定を解除しないで』と協力を求めているにもかかわらず、解除へと動いている。日米関係について、日本が一度見つめ直すいい機会でもあると思う」

 耕一郎さん「政府として真剣に取り組んでいるのだろうが、もう少し具体的な施策を検討したり、ある程度動きを見せてほしい。たとえば経済制裁の追加発動を行うとか、ちゃんと日本としての姿勢を堅持するんだというスタンスをアピールしてほしい」

 ■被害者家族を支えるべき30~40代世代の「ジレンマ」

 --親の世代の高齢化が進むなか、若い世代としての役割をどう考えますか

 拓也さん「代表が1人目で終わらず、2人にまたがること自体が異常だ。飯塚代表の代で何としても終わらせなければいけない」

 耕一郎さん「滋さんからうちの親父に代表が替わったが、そのこと自体、全然喜ばしいことではないし、ただ単に時間が流れてしまったという表れの一端でしかない」

 拓也さん「親たちが高齢化する中、本当は自分たちが代わって地方へ講演に行ければいいのだが、私たちは勤務先では中心的な役割を担う現役の世代。実際には実現が難しい。自分たちも『(親に)何もしてあげられない』というか『できない』ことの苦々しさ、ジレンマがある。世代交代して頑張りたいんですよ、みんな。でもできない。表現しようのない難しさを抱えている」

 耕一郎さん「仮に私にとても資産があってもう働かなくていい、という話なら、前面に立って救出活動をやるけれど、この先、自分に家族ができたり、(母の)八重子さんが帰ってきたとき、彼女をどう養っていくんだという話もある。だから経済基盤をしっかりしなければいけないというのがどうしても先に立つ。その上で、自分のプライベートと救出活動の3者のバランスをとるのはとても難しい。拓也さんは家族があるから特に難しいと思う」

 拓也さん「だから、国民のみなさんに『かわいそう』という感覚でもいいし、『許せない』という怒りの気持ちでもいいし、『いっしょに頑張ろう』という力強い感覚でもいい。拉致は許せないんだ、という気持ちを自分のこととして持って頂いてどこかへぶつけてもらったり、1人でも多くの人に口添えをいただきたい。それは私たちができないことだし、大きな後ろ盾と力になる。私たちは国民のみなさんに『お力を借りたい』ということしかできない」

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