【焦心】(中)拉致解決「日本は不変」
■“確約”にも新政権へ残る懸念…
「どうしよう…。日本はどうなるのか」
今月12日。拉致被害者の家族会事務局長で、増元るみ子さん=拉致当時(24)=の弟、照明さん(51)は、東京都文京区にある家族会事務所で、安倍晋三首相の辞意を伝えるテレビの速報に呆然(ぼうぜん)とした。
事務所の電話はひっきりなしに鳴っていた。報道各社から殺到する問い合わせにも、コメントを出せないほど憔悴(しょうすい)した。
安倍首相は昨年9月に就任すると、自らを本部長とする「拉致問題対策本部」を設置。北が核実験を実施した際には、拉致問題を理由の一つとして挙げ、即座に日本単独の制裁に踏み切った。
「小泉首相の訪朝から4年。みなさんにもタラップで(家族を)待ち受ける感激を味わってもらいたい」
安倍首相は昨年9月29日、就任後初めて官邸で面会した被害者家族に、涙をぬぐいながらこう語ったという。だが、「拉致問題を『鉄の意志』で解決する」と語った首相は職を辞す。
首相の辞意を受けて、会見した家族会副代表で、田口八重子さん=同(22)=の兄、飯塚繁雄さん(69)は「拉致問題も大切だが、それよりもたくさんの問題を抱えて悩み、限界と決断したのだろう」と気遣った。その光景は切なく映った。
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「安倍首相は被害者家族の中で非常に大きく、大切な存在だった。でもどなたが首相になられても、日本としてやっていくことは変わらない」。中山恭子首相補佐官は静かに、そう語った。
安倍首相が拉致問題を内閣の最重要課題とする方針を受け、拉致問題担当としては初の首相補佐官に就任。7月の参院選では、「国民の代表として、拉致問題解決に取り組んでほしい」と、安倍首相から直接、要請を受けて自民党から出馬、初当選を果たした。
安倍首相とともに拉致問題に取り組んできた立場だけに、その去就も注目される。
「補佐官は安倍首相が任命したことですから、辞任なさると、私自身も…」とするが、「拉致問題にはずっとかかわっていく。この問題から離れるつもりはない。拉致問題の解決をテーマにして選挙に臨み、議員になっており、辞めるということは全く考えていない」と断言する。
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ただ、中山補佐官にも家族らの落胆ぶりはひしひしと伝わる。次の首相で政府の姿勢は変わってしまうのではないか。「解決」の名の下に、安易な妥協がなされてしまうのではないか…。
家族らが猛反対したにもかかわらず、拉致問題の「呼び水に」と、北にコメ支援を実施した内閣もあった。結果は、何も変わらなかった。家族らには、「政府に裏切られ続けた記憶」が今でも鮮明に残っている。
「安心してください。私自身は何も心配していません」。中山補佐官は電話で家族らにこう語りかけている。
「多くの日本の人々が、拉致問題に関心を持ち、心を痛めている。拉致問題は、妥協や取引ができる問題ではない。被害者を人質の状態に置いたままで良いと感じる政治家はいないと思う」。中山補佐官のいつもの穏やかな口調に、力がこもった。
「救出には、あらゆることをしていかなくてはならない」との補佐官の言葉を、家族らは「変わらぬ熱意」と受け止めるが、次の内閣で「新たな動き」がみえなければ、家族の焦りはさらに増す。「拉致はあった」と北が認めはしたものの、被害者の北での足跡は途絶えたまま5年になる。あまりに長い。
「【焦心】(中)拉致解決「日本は不変」」事件です‐事件ニュース:イザ!