過去の清算 | trycomp2のブログ

過去の清算

 12月25日、日朝両国は、今後の政府間交渉は、①拉致問題、②核、ミサイルなど安全保障問題、③過去の清算を含む国交正常化――の三つのテーマで並行協議を行うことで合意した。これによって、2002年10月以来中断していた国交正常化交渉が、06年1月下旬にも再開されることになった。

 24~25の2日間、北京で行われた交渉では、当初、北朝鮮が「拉致問題は解決済み」との原則を変えず難航したが、日本側が強く要求した結果、最終的に北朝鮮が口頭で「拉致を含めた未解決の懸案について具体的な措置を講ずる」と約束したのを受けて、並行協議の合意を取り付けた。

 一見、北朝鮮側が譲歩したように見えるが、実際は「過去の清算」、すなわち、かつて日本が行った植民地支配に対する賠償請求に早く道筋をつけたいからだ。拉致問題で決して妥協したわけでないことは、「日本にも立場があり、われわれにも立場がある。協議のなかで調整しようということだ」(宋日昊外務省アジア局副局長)という発言にうかがわれる。

 朝鮮中央通信は26日、初めて日朝政府間協議について報道し、「拉致問題」を明記するとともに、国交正常化とは「過去の清算に関連する諸般の問題」として、「経済協力、在日朝鮮人の地位、文化財返還など」を列挙した。

 では、賠償金の額は具体的にどのくらいになるのか。 この場合、参考になるのは、1965年6月、韓国と日韓基本条約を締結した際の戦後補償だ。このとき、韓国が日本の植民地支配への賠償として6億ドルを請求したが、日本は、交戦状態になかったことをあげて賠償ではないと主張、結局、経済協力の名目で3億ドルを支払う旨を提示した。結局、双方で開きがあったのを、経済協力額を「無償3億ドル、有償2億ドル、民間協力資金1億ドル以上」とすることで政治決着した。

北朝鮮はこれにならい、100億ドルを最小限の請求額と表明(96年、李宗革アジア太平洋平和委員会副委員長)しているほか、「戦後賠償プラス戦後の補償」の金額として130億ドルとはじいている。100億ドルというのは、当時、韓国に支払った有償、無償合わせた5億ドルを下敷きに、物価上昇率などを考慮し、現在の為替レートに換算したものだ。しかし、日本としては、非公式だが、北朝鮮の人口が韓国の半分に満たず、案分すれば約80億ドルが妥当なところとはじき出しているといわれる。

 いっぽう、今度の並行協議の合意は、拉致被害者家族ら関係者に「拉致問題が置き去りにされるのではないか」との懸念を抱かせている。これに対し、外務省は26日夜の説明会で、「拉致問題の解決なくして国交正常化はない」(斎木昭隆アジア大洋州局審議官)と従来の基本方針に変化がないことを強調した。さらに、北朝鮮が誠意ある態度を示さなければ、交渉を再開しても早期に打ち切ることがありうるとの認識も示している。
文藝春秋編 日本の論点PLUS