拉致めぐり動き急 罪憎み怒りの爪研ごう 2006年2月27日 | trycomp2のブログ

拉致めぐり動き急 罪憎み怒りの爪研ごう 2006年2月27日

 本県に三人いる特定失踪(しっそう)者や横田めぐみさんら拉致被害者の安否確認、北朝鮮への経済制裁発動などを政府に求める意見書が県内各市町村会で相次いで可決され、三月議会後には全市町村会の意見書が出そろう見通しとなった。

 小浜市の地村保志さん、富貴恵さん=ともに(50)=夫妻らを拉致したとして、福井県警などがこのほど元工作員ら二人の逮捕状を請求。また参院の拉致問題などに関する特別委員会が本県の実情を調査した。

 それぞれ個別の動きと見えながらも、底流には共通するものがある。それは、不誠実な対応を繰り返す北朝鮮への、日本国民の怒りである。

 各市町村会の意見書可決は、若狭町役場に事務局がある「嶺南地区特定失踪者の真相究明を願う会」の働きかけが端緒となった。とりわけ、特定失踪者三人の家族や救う会福井の池田欣一会長が昨年末から、文字通り東奔西走して各議長らに要請した労が大きい。

 嶺北の各市町村会はそれまで、拉致問題に必ずしも積極的とはいえなかった。ただそれは、地元に拉致被害者や特定失踪者がいないために切実感がなかったというだけである。家族らの悲痛な声を初めて聞いたある議長は認識不足をわび、涙を流して協力を約束した。くすぶっていた怒りに火が付き、全県に燃え広がった。相次ぐ意見書はその結果とみるべきだろう。

 金正日総書記が日本人拉致を認め、謝罪してから三年余り。今月初めの日朝政府間協議で、北朝鮮は日本が求めた辛光洙元工作員の引き渡しを拒否し、安否不明者についても再調査を約束しようとはしなかった。

 日本国内の世論は、感情に任せて沸騰するようなことはなかった。横田めぐみさんの父で拉致被害者家族会代表の滋さん(73)も「主張すべきことはしてくれた」と冷静だった。北朝鮮の出方はもはや織り込み済みだからである。

 噴出しなかった分、怒りのマグマは増大した。いつ爆発してもおかしくない。だからこそ、警察庁は元工作員らの国際手配に踏み切り、参院特別委も調査に乗り出したのである。

 救う会福井の池田会長は、かねがね次のように言い続けている。「拉致問題は一足す一」。小さな子でも分かる足し算の答えのように拉致が悪であるのは自明のことというのである。

 拉致問題には、不幸な歴史的経緯がある。政治思想や米韓中などを含めた国際的な力学、複雑怪奇な外交駆け引きも絡む。だからといって、拉致は決して許されるわけはない。

 問題解決に全責任を負うべき政府は別として、私たち国民はその罪を憎む一点で、さらに怒りの爪(つめ)を研ぎたい。
論説