社説:6カ国協議 実行するまで信用するな
北京で開かれていた6カ国協議が終わり、北朝鮮の核放棄に向けた合意文書がまとまった。
核実験を行った北朝鮮に核放棄を迫る第一歩がこの文書である。だが、1994年の米朝枠組み合意は失敗に終わった。その苦い教訓を踏まえ、北朝鮮が核を放棄する最後の日まで警戒心を緩めることはできない。今後、さらに日本、米国、中国、韓国、ロシアが共同歩調をとっていかなければならない。
北朝鮮に核施設を廃棄させる、その見返りに5カ国がエネルギーを支援するという基本構図は、かつてホゴにされた枠組み合意とあまり変わらない。
違うのは、北朝鮮に求めたのが枠組み合意の時の「核施設の凍結」という一括措置ではなく、核施設の活動停止、封印という初期段階措置と、その後の施設無能力化による核放棄の段階とに分けたことである。それぞれの段階ごとに北朝鮮が実行する具体的措置と、それに対応した5カ国のエネルギー支援を決める。
初期段階措置とは、寧辺(ニョンビョン)の再処理施設を含む核施設を、最終的に放棄を目的として活動停止、封印し、国際原子力機関(IAEA)の査察を受けさせることである。60日以内に実行するという期限も付けられている。
疑い深い北朝鮮を対話の場に引き出し、核放棄を再確認させたことは一歩前進だろう。
だが、北朝鮮は05年9月の6カ国協議で「すべての核兵器と現存する核計画の放棄」を約束した。それにもかかわらず1年後には核実験を実行し裏切ったのである。まず60日後の結果を見なければ、北朝鮮が本心から核放棄に応じたと判断するのは早い。
初期段階措置と、それ以後に分けたことも、支援重油の食い逃げを防ぐかもしれないが、北朝鮮にとってはごね得戦術に出る機会が増えただけかもしれない。
北朝鮮が曲がりなりにも合意文書を受け入れた最大の理由は、米国による経済制裁、金融制裁が実質的な効果をあげていたからである。ベルリン、北京と2度の米朝直接協議によって必死に活路を探ってきた北朝鮮に対して、米国が解決を急ぐことはない。
米国が約束したのは、経済制裁の「解除の手続きの開始」であって、解除ではない。金融制裁の解除は慎重にすべきだ。急げば、イラクやイラン問題に足をすくわれて北朝鮮問題では軟化したと北朝鮮に思われるだろう。いつでも手綱を引き締められる態勢を維持すべきだが、合意文書には「行動対行動の原則」の文言も入った。北朝鮮は、これを振り回して米国に即時制裁解除の行動を迫るかもしれない。
日本政府は、今後、拉致問題を6カ国協議の場にどのように持ち出すか、という難問に直面する。合意文書で関係国による5作業部会の設置が決まった。日朝国交正常化部会もできる。1部会だけの遅れが許されないかのような表現もあり、拉致問題封じ込めになりかねない。慎重に対応すべきだ。
毎日新聞 2007年2月14日 0時04分
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