【萬物相】北朝鮮による外国人拉致被害者 | trycomp2のブログ

【萬物相】北朝鮮による外国人拉致被害者

 1978年に北朝鮮に拉致された韓国人女優の崔銀姫(チェ・ウンヒ)があるフランス人女性からこんな話を聞いた。「パリでハンサムな北朝鮮の男性と恋に落ちた。その男性は“僕の両親に結婚の許しをもらおう”と、平壌に一緒に行くよう誘った。平壌空港に降りるとすぐに彼は姿を消してしまった。わたしは誰かに強制的に連れて行かれた。後で分かったことだが、その男は北朝鮮の工作員だった」

◆78年、ある東洋系の男性がレバノン・ベイルートの秘書学校を訪れた。彼は「月1000ドル(約12万円)払うから日本の会社で働く女性を推薦してほしい」と言った。シーハム・スリダホさんをはじめ4人の女子学生が希望に胸を膨らませ同行したが、到着したのは東京でなく平壌だった。北朝鮮は4人をスパイ養成所に送り、柔道やテコンドー、盗聴技術を教えた。シーハムさんは元米兵で北朝鮮に脱走したパリッシュ氏と無理やりに結婚させられた。

◆パリッシュ氏とシーハムさん夫婦は別の元米兵、ジェンキンス氏、ドレスノク氏夫妻と親しかった。ジェンキンス氏は日本人の妻の後を追って北朝鮮を脱出した後、2005年に手記を書いた。「ドレスノク氏はルーマニア人の“ドナ”と結婚した。ドナは北朝鮮が雇ったイタリア人の男にだまされ平壌に来た」。この「ドナ」が78年にローマで失踪(しっそう)したドイナ・ブンベアさんと確認されたことをルーマニアの新聞「エベニメントゥル・ジレイ」が報じた。同紙が報じたドイナさんの家族関係、結婚・離婚歴、拉致経緯はジェンキンス氏が聞いた「ドナ」の話とまったく同じだった。

◆ドイナさんは次男を「ガブリエル」と名付けた。故国にいる弟の名前だ。97年に肺がんでこの世を去る間際に「北朝鮮には埋葬されたくない。化粧を施してほしい」と遺言したという。家族への思いや、北朝鮮への憎悪がどれだけ強かったかを察するに余りある。北朝鮮による外国人拉致は76年に本格化した。金正日(キム・ジョンイル)総書記が、朝鮮労働党「35号室」をはじめとする海外工作部署に対し「外国人を組織的に活用せよ」という「スパイ教育現地化」指令を下したためだ。これまでに韓国はもちろん、日本・フランス・イタリア・オランダ・中国・タイなど12カ国の約520人が拉致された。

◆北朝鮮は「マカオの銀行、バンコ・デルタ・アジア(BDA)に凍結されていた2500万ドル(約29億円)が北朝鮮口座に返還されていない」とし、北京で行われていた6カ国協議の最中に帰国した。金融取引では送金・受取口座の名義人の身元を確認するのが基本だ。北朝鮮はこれさえもきちんと明らかにしないまま、断固として資金を返すよう要求した。韓国の 6カ国協議代表が「荒唐無稽(むけい)だ」と言うほどだ。世界各国の人々を何とも思わずに拉致する北朝鮮に、金融取引の原則をただすこと自体が無理なのかもしれない。

シン・ヒョソプ論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報JNS

朝鮮日報 Chosunilbo (Japanese Edition)