【金融制裁解除】空気読むほかない日本
北朝鮮の金融制裁の対象となっていたマカオの銀行バンコ・デルタ・アジアの北朝鮮関連口座の凍結解除を米国が容認した。
きのうからは北京で朝鮮半島非核化の作業部会が始まっている。北朝鮮問題は、大きく動き出す兆しが見えだした。
日本政府は、米の金融制裁解除を「肯定的」に受け止めている。だが、昨年10月の国連安全保障理事会の制裁決議以来、米と歩調を合わせ圧力を強めてきたこれまでの姿勢と矛盾している。
拉致被害者家族会が政府の態度の変化に不満の意を示すのも当然だ。
政府は明らかに米の対北朝鮮政策を読み違えてしまった。政権発足以来、圧力で北に臨む姿勢を強めてきた安倍政権の判断の誤りと言わざるを得ない。
六カ国協議の場で「5対1」で包囲網を狭めれば、核問題も拉致も解決するような期待を抱かせた安倍政権の責任は重い。
六カ国協議は「解決」の場というより、「交渉」の場である。粘り強く交渉を続け、問題の解決を探っていかなければならない。
それは政府の外交担当者と閣僚、そして首相も最初から承知しているはずだ。だから、米の制裁解除に肯定的なコメントを出しても平気なのだ。拉致を政治問題にしてきた国会議員や安倍首相の本心がうかがえるようで、拉致被害者や家族の心情は穏やかではないことだろう。
5つの作業部会を経て、19日から第6回六カ国協議が開かれる。
核放棄の見返りとして北朝鮮に重油を供給することでは韓国が5万トンの支援を表明した。日本以外は制裁緩和、解除に踏み込んでいる。日本だけが足並みを乱し、六カ国協議の枠組みを崩すわけにはいかない。
日本は場の空気を読んで立場を主張していくほかないだろう。
北朝鮮は外交上手だ。1月、米下院で日本政府に従軍慰安婦問題の謝罪を求める決議案が提出され、これが一つには米朝接近を促したとされる。決議案に対して安倍首相は「狭義の強制性を裏付ける証拠がない」と発言した。米朝接近をけん制する意味も込めたかもしれない。だが、発言は米の主要メディアと中国、韓国の批判を招き、その機に北朝鮮は日本の制裁圧力にも絡めて批判を強め、日本の孤立化を図っている。
挑発に乗らず、慌てず、冷静に交渉を進めるような胆力が日本政府には求められる。
高知新聞社説■【天下り規制】生煮えに終わらぬよう■