“北の論理”でまた迷路 送金遅れに固執 | trycomp2のブログ
北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議は二十一日も、米国の北朝鮮に対する金融制裁問題が障害となり、空転した。先に核放棄に向けた「初期段階の措置」で合意し、比較的順調に進むとの期待含みで始まった今協議。だが、ふたを開けてみると、やっぱり今度も待っていた。北朝鮮問題に特有の思わぬ「落とし穴」が-。 (北京・城内康伸)
「北京にも春のムードが訪れました」
協議初日の十九日。北朝鮮首席代表の金桂冠(キム・ゲグァン)外務次官は満足げに語った。
北朝鮮への金融制裁で、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)に凍結された北朝鮮資金約二千五百万ドルの全額が、中国銀行を介した送金で返還される。米国が同日朝、その決定を発表した直後のことだった。
「六カ国協議の雰囲気は大変良い。今日(十九日)、明日、あさっての三日間だ」。議長役の中国首席代表、武大偉外務次官も明るい見通しを示していた。
二月の協議で合意した共同文書で、設置が盛り込まれた五つの作業部会は十八日までに開催が一巡。北朝鮮も、寧辺(ニョンビョン)の核施設停止や国際原子力機関(IAEA)の査察官受け入れに前向きな姿勢を表明し、この時までは関係国の間で、協議の展望に楽観論もあった。
ところが一夜明けて状況は暗転。金次官は「金融制裁の全面解除が確認されない限り、論議には応じない」と、強硬姿勢に転じ、協議は足踏み状態に陥ってしまった。
「資金が送金されない限り、北朝鮮を交渉テーブルに引き込む方法はない」。前日に続いて空転が続いた二十一日。韓国の千英宇(チョン・ヨンウ)外交通商省朝鮮半島平和交渉本部長は半ばあきらめ気味に語った。韓国の代表団によると、北朝鮮資金は二十一日午前までに全額送金が完了する見通しだった。
送金の遅れは手続き上の問題が原因という。BDAでの送金業務が手間取った上、「受け手」となる中国銀行が、北朝鮮の不法行為に関連した資金を取り扱う可能性を懸念したという「話にもならない出来事」(千本部長)が重なった。
ただ、朝鮮貿易銀行の口座がある中国銀行は中国政府の影響下にある金融機関。「急速な米朝関係改善の可能性に懸念した中国が、何らかの力を働かせたのでは」(消息筋)。一時はうがった見方まで出た。
■対米不信根強く
北朝鮮が今回みせた態度は、金融制裁解除を当面の最優先課題としていることを、あらためて際立たせた。金次官は十七日に北京入りした直後「全面解除が初期段階措置の前提」と念押し。その後は十九日の協議開始まで沈黙を守り続けた。
北朝鮮は金融制裁を米国による「敵視政策の象徴」と呼び、米国が解除に踏み切ることは「関係改善に向けた誠意を示す第一歩」(北朝鮮専門家)と位置づける。
米首席代表のヒル国務次官補は二月の六カ国協議合意直後、北朝鮮の背中を押すために、金融制裁問題は「三十日以内に解決する」と表明した。しかし、今協議が始まった十九日の時点で、約束した「期限」から四日が超過。北朝鮮としては、根強い対米不信が再び拡大したはずだ。
「ただ各国が集まっただけ」(協議筋)で終わりそうな今協議。前途には、北朝鮮が核実験を行ったプルトニウム型とは別の、高濃縮ウランによる核開発計画の究明や、北朝鮮が求める軽水炉提供など懸案が山積みだ。ヒル次官補が「テレビゲームのように、レベルが上がるほど難しくなる」と表現する六カ国協議。関係国は今後も、こうした北朝鮮の難解な出方を見極めながら、厳しい交渉を続けることになる。

