『よど号』暗部解明なるか 石岡さんら失跡27年 実家への手紙突破口

石岡亨さん=失跡当時(22)=と松木薫さん=同(26)=拉致に関与したとして十三日、警視庁公安部がよど号ハイジャック犯の妻二人の逮捕状を請求し、一九八〇年の失跡から二十七年の歳月を経て捜査が動きだす。そのきっかけには、石岡さんが必死の思いでつづった一通の手紙があった。十三日は松木さんの五十四回目の誕生日。警察当局は、欧州を舞台としたよど号グループの拉致工作の全容解明を進める。
石岡さんは八〇年三月、「チーズなどの技術を学びたい」と欧州へ旅立った。翌月にはスペイン・バルセロナの動物園で、よど号犯の妻で拉致実行犯とされる森順子容疑者(54)と若林佐喜子容疑者(52)の二人と肩を並べ、写真に納まっている。同年六月、家族あての絵はがきが届いたのを最後に失跡。マドリードに語学留学中に石岡さんと知り合った松木さんも、ほぼ同時期に消息を絶った。
やがて八八年九月、石岡さんの実家に一通の手紙が届いた。
石岡さんと有本恵子さん=同(23)=の写真が同封され、「私と松木さん、途中で合流した有本恵子君ともども平壌市で暮らして居ります」「事情あって、欧州に居た私たちはこうして北朝鮮にて長期滞在するようになりました」などと消息が記されていた。
手紙は、平壌を訪れたポーランド人にこっそりと渡されていた。警察当局はこの手紙から「三人は北朝鮮に拉致された」との疑惑を深めることになる。
事態が動いたのは二〇〇二年三月。よど号事件の実行犯の元妻(51)が、八三年に英国留学中の有本さんに接近し、アルバイト話を持ちかけながらデンマークへ誘って、北朝鮮に送り出した、と証言。「故田宮高麿リーダーの指示で既に獲得した男性と結婚させるため」とその目的を語った。
そして、〇二年九月の日朝首脳会談。北朝鮮が石岡さんら三人の拉致を認めて謝罪した。警視庁は同月、デンマークで有本さんの北朝鮮出国を仲介したと元妻が指摘する安部(本名・魚本)公博容疑者について、結婚目的誘拐容疑で逮捕状を取得。元妻が言う「獲得した男性」は石岡さんと松木さんとみられ、北朝鮮側の説明では、有本さんは石岡さんと結婚したとされる。
しかし、よど号グループは、元妻の証言について「事実に反する」と主張。石岡さんには「偶然出会っただけ」とし、松木さんについては「面識すらない」として、欧州での拉致事件への関与を全面否定した。また北朝鮮側は「拉致によど号犯との関連は解明されていない」と説明している。
東京新聞:【関連】『よど号』暗部解明なるか 石岡さんら失跡27年 実家への手紙突破口:社会(TOKYO Web)