【地球随感】安倍外交、台湾攻撃阻止に布石 矢島誠司 | trycomp2のブログ

【地球随感】安倍外交、台湾攻撃阻止に布石 矢島誠司

「職を賭して…」などと首相がいわざるを得ないほど、国内政治では苦難続きの安倍内閣だが、外交面では重要な布石を着々と打ってきている。

 布石はその一手だけをみれば小さなものだが、いずれ将来の歴史を左右する。もっとも、その布石が常に正解とはかぎらないので要注意ではある。

 先週9月7日付(一部地域では8日付)の産経新聞が報じた次のニュースもそんな重要な布石の一つであった。

 「日本の国連代表部が、台湾の国連加盟申請を不受理とした国連事務局に対し、『台湾に関する地位認定の解釈が不適切だ』とする異例の申し入れを行っていた」というものだ。

 日本が「不適切だ」と指摘した国連事務局の「台湾の地位に関する解釈」とは、潘基文(パンギムン)・国連事務総長(63)が台湾の申請を退けた際に言ったと伝えられる「台湾は中華人民共和国の一部」だとする解釈のことを指しているものと思われる。

 報道によれば、この申し入れは8月に「米国に続いて行われた」という。

 これがなぜ重要な布石かといえば、日米が台湾の国連加盟を支持することにつながるということではなく、中国による台湾への武力行使を防ぐ一手になり得るからである。

 潘事務総長の台湾の地位に関する解釈を認めてしまえば、「中国の一部である台湾の独立反乱分子への武力使用」ということで中国の台湾攻撃を正当化してしまいかねない。事務総長の解釈はそれほど危険、と日米は判断したのだろう。

 台湾の陳水扁(ちんすいへん)総統(56)は7月19日、今年初めて「台湾」名義での国連加盟申請を潘事務総長に提出した。それまでは「中華民国」という名義で、1993年以来14年連続で国連へのいわば復帰加盟申請を続けてきたが、今回は復帰ではなく、新規加盟という申請をしたことで、台湾の国連加盟問題は新たな段階を迎えたといえる。

 この申請に対し、潘事務総長は7月23日、国連における中国の代表権を中華人民共和国に与えた1971年の国連決議2758を不受理の根拠とし、さらに「台湾は中華人民共和国の一部」だとする台湾の地位認定に関する解釈を述べたとされる。

 これには陳総統も、「国連決議2758は中華人民共和国に台湾国民の権利を代表する権利を与えていない。台湾が中華人民共和国の一部とも言及していない。国連事務局に加盟審査をする権限はない」とする抗議書簡を事務総長に再送した。

 日米とも、日中共同声明や米中上海コミュニケなどで中国の主張を尊重する姿勢を示しているが、台湾が中華人民共和国の一部であると認めたことは一度もない。日本の政府答弁書でもそうなっている。

 米国の「一つの中国」政策も「単にアメリカは一つの中国政府しか認めないという意味にすぎない。直視すべき現実は台湾海峡を隔てて異なる2つの国家が存在することだ」とジョン・タシク元米国務省中国首席分析官は著書『本当に「中国は一つ」なのか』(草思社)などで述べている。

 台湾が中国の一部でないのなら、中国の台湾への武力攻撃は重大な国際法違反となる。今回の申し入れは、「台湾は中国の一部」とする中国にクギをさすものともなった。

 安倍政権は中国との関係改善を実現しつつ、中国に対して言うべきことは言うという姿勢を見せた。「主張する外交」とはこういうことだろう。(論説副委員長)

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