金総書記の米メッセージ 中国が米主導を警戒、対日接近
「事実ならニクソン・ショック以上の衝撃だ」
米国は北朝鮮を戦略拠点にするため対北政策を転換したとの中国戦略関係筋の情報に、日本の外交筋は1971年7月、日本の頭越しに発表されたニクソン米大統領訪中を引いて驚きを表した。
この情報は、今月7日までに本紙にもたらされた。機密性が高く、確認されていないが、昨年10月末に6カ国協議の米朝首席代表であるヒル、金桂寛両氏が直接協議(北京)して以来、米国が日本政府をいらだたせながら対北朝鮮接近策をとってきた背景を説明している。
6カ国協議の行き詰まりを打開したのは、今年1月中旬、ベルリンにおける米朝協議だった。この協議で、米国の北朝鮮資金凍結問題が解決に向かった後、6カ国協議の主導権は、議長国の中国から米朝に移っていった。
中国戦略関係筋によると、中国指導部は、米朝正常化は不可避と分析し、米国が北朝鮮と戦略的パートナーになり南北統一実現のイニシアチブを取る可能性に強い警戒心を抱く。8日に発表された南北首脳会談は、その流れの一つだった。
このきっかけになったのが、金正日総書記のブッシュ大統領あてメッセージだったと同筋は言う。北京の外交筋は、情報は未確認としながら「イラク問題などで人気低迷中のブッシュ政権が、残り短い任期中に核問題の解決と朝鮮半島統一を実現、歴史に名を残すチャンスと判断したのではないか」と述べた。
中国戦略関係筋は、この対北朝鮮接近策は、ライス米国務長官とヒル国務次官補が立案したとみている。米国務省内では、対北朝鮮強硬派が昨年来、次々に排除され、対話路線シフトが敷かれた。
中国にとって大きなジレンマは、核問題の平和的解決のため、米朝対話を促し、米朝正常化も支持してきたことが「裏目」になりつつある点にある。中国にとって北朝鮮は、強力な外交カードだったが、いまやそのカードは米国の手に移りつつあるからだ。
昨年10月の核実験後、中国は国連安保理の対北朝鮮制裁決議に賛成、米国の北朝鮮資金凍結問題でも、マカオの銀行からの送金の受け皿になることを拒否した。それ以前から中朝関係は、表面上の友好関係にはほど遠い状態にあったが、核実験後は冷却化した。
同10月中旬、再実験の自制と6カ国協議への復帰を促すため訪朝した唐家●国務委員に対し、金正日総書記は、金日成主席の「遺訓」を話したが、米国との対話を強く望んだという。
「遺訓」とは(1)朝鮮半島の非核化(2)対米関係正常化(3)南北統一-の3点で、金総書記は米大統領あてメッセージに盛り込んだ上で「米国の親密なパートナーになる」と強調したという。
中国側が懸念するように、北朝鮮が米国の戦略パートナーになるかどうかは疑問がある。かつて中ソをてんびんにかけ、体制維持と物質的援助を引き出してきたのと同じ、大国利用の戦術かもしれない。
しかし中国が急速に経済・軍事大国化し、ロシアとの提携を強化する中で、米国にとって朝鮮半島の戦略的価値は高い。裏返せば中国も同様であり、過剰ともいえる警戒心を戦略関係筋が示す理由だ。
中国は今後、対日関係の緊密化に努めるとみて間違いない。慰安婦問題や米最新鋭戦闘機F22供与問題で日米関係がぎくしゃくしている中、拉致問題も絡んで、日米同盟のあり方が問われるとみる外交筋は多い。
(伊藤正)
●=王へんに旋
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