拉致事件捜査*「よど号」を足がかりに(6月18日) | trycomp2のブログ

拉致事件捜査*「よど号」を足がかりに(6月18日)

 北朝鮮による日本人拉致事件の真相の一端がまた明らかになりつつある。

 石岡亨さん(札幌市出身)と松木薫さん(熊本市出身)が欧州で消息を絶ったのは、一九八○年だった。

 よど号ハイジャック犯の妻二人によって北朝鮮に連れ去られたとみられ、警視庁が結婚目的誘拐容疑でこの二人の逮捕状を取り、国際手配した。

 よど号グループはほかの拉致事件にも関与していた疑いがある。

 彼らに対する捜査が、やがて拉致事件の全面解決につながることを期待したい。

 逮捕状が出たのは森順子容疑者と若林(旧姓黒田)佐喜子容疑者。両容疑者はスペインのマドリードで石岡さんと松木さんに近づき、東欧への旅行に誘い出して拉致したとされる。

 よど号のメンバーは当時、日本で革命を起こすため、その中核となる日本人を「獲得」しようと欧州で活動を展開していたという。

 失跡したとき、石岡さんは二十二歳、松木さんは二十六歳だった。身勝手な目的のために前途有為な若者の人生を奪い去るなど、到底許されることではない。

 いまも北朝鮮には、よど号のメンバー四人とその家族計七人が暮らしている。「拉致問題は解決済み」といい張る北朝鮮相手に容易ではないだろうが、警察には引き続き粘り強い捜査を求めたい。

 気がかりなのは石岡さんや松木さんら拉致被害者の安否だ。

 北朝鮮はかつて、日本側に対し次のような説明をしている。

 石岡さんは同じ拉致被害者の有本恵子さんと結婚し一児をもうけたが、八八年にガス中毒で家族全員が死亡した。松木さんは九六年に交通事故死した。遺骨はいずれも洪水によって流出してしまった。

 これを信じろといわれても、北朝鮮の重ね重ねの不誠実な対応をみれば、信じられるはずなどない。

 四月には釧路市出身の女性の幼い二人の子どもを拉致した疑いで、北朝鮮の女工作員が国際手配されている。女性は殺害されたようだという。

 この事件も、よど号のメンバーと接点があるとみられている。

 「弟が生きていると考えるのは難しいことだと分かっている」「生死が分からない中ぶらりんが一番つらい」

 石岡さんの兄は以前、北海道新聞の取材に悲痛な胸中を、そう語ったことがある。拉致という非道の犯罪は、被害者の家族の幸せまで踏みにじってしまったのだ。

 それでも家族は被害者生還の望みを捨てていない。よど号のメンバーやその妻たちがいまとるべき道は、すみやかに帰国して真相を語り、法の裁きを受けることだ。


社説 北海道新聞