対北制裁延長 切り離せない核と拉致
北朝鮮に対する制裁措置の延長は当然だ。日本人拉致は「解決済み」というかたくなな姿勢をとり続けているからだ。解決のため、日本政府はこれまで以上に周辺国の協力を得る努力を。
「拉致した日本人はもういない」
金正日総書記は、先の南北朝鮮の首脳会談で、日朝関係改善を求めた盧武鉉大統領にこう答えたという。
日本政府はこれまで十七人を拉致被害者と認定し、全員帰国などの原状回復を繰り返し求めてきた。
ところが、北朝鮮は五人とその家族を返しただけで、残りの被害者については「死亡、未入国」と誠意ある回答をしていない。しかもその説明は間違いや矛盾が多い。総書記の言葉はとうてい容認できない。
制裁は、北朝鮮の拉致に加え、昨年十月の核実験を受けて発動され、今年四月に半年間延長された。
具体的には、「万景峰号」など北朝鮮船舶の全面入港禁止、全品目の輸入禁止、北朝鮮国籍者の入国原則禁止が盛り込まれ実施されている。
今回、制裁の半年間延長を閣議決定したのは、「拉致問題に具体的進展がないことや核問題など含め総合的に勘案して判断した」(町村信孝官房長官)からだ。
福田康夫首相は圧力より対話重視を表明しているが、北朝鮮の現状からすれば、当面これしかない。
金総書記が、拉致でかたくなな対応を見せたのは、「核」を材料にした瀬戸際外交で、米国や韓国とうまくやっている、日本は「乗り遅れ」を恐れてやがて軟化するという思惑が働いたのだろう。
北朝鮮に外交常識が通じない以上拉致問題解決に妙案はない。日本はねばり強く取り組むしかない。
六カ国協議の日朝作業部会などで直接対話を続けるのは当然だが、同時に周辺国の協力を得るため、一層の努力をすべきだ。特に、米国、中国、韓国との連携が重要だ。
このところ、拉致に対する理解は進んでいる。さらに日本にとって核問題と拉致事件が密接に関連していることを、あらゆる機会、パイプを通じて説得する必要がある。
北朝鮮がテロ支援国の汚名を返上することが、核放棄の見返りの対北支援の条件であり、北東アジアの平和と安定に不可欠など、材料はあるはずだ。
福田首相は「私の手で拉致問題を解決したい」と言明した。国内にも「乗り遅れ論」、日本だけの制裁は効果なしという過小評価論もあるが焦れば足元を見られるばかりだ。
圧力と対話を弾力的に活用して事に当たる必要がある。
中日新聞:対北制裁延長 切り離せない核と拉致:社説(CHUNICHI Web)