ディープチャイナ:第123回 中国東北地区の国有企業に春は訪れるか(川西宏幸) | trycomp2のブログ
中国の東北部、遼寧省・瀋陽にある国有工作機械メーカー、瀋陽機床を訪問した。今年の瀋陽は日本と同様、寒波の影響で例年以上に低温が続き、3月とはいえ訪問期間中も最低気温マイナス18度、最高気温マイナス6度の日があった。瀋陽の中心部は北京や上海ほど大きくなく、国有企業は市街地に近いところにも点在し、「国有企業の街」という印象が強い。
瀋陽機床は1993年に国有企業3社の合併により設立して以来、中国最大の工作機械メーカーとなっている。同社は自動車、船舶、金属、化学など産業用の工作機械を製造、2005年の生産量は5万5000台、売上高は43.5億元(約 650億円)に成長した。ここ数年間は投資主導の経済成長が続き、同社にとっては追い風となってきた。
東北地区は、格差是正の観点から西部地区等と並び地域発展戦略の一部を形成、国有企業に対する税制優遇措置等を導入して活性化を試みている。新たな五ヵ年計画においては先進的な製造業の育成が国家の重点課題の一つに位置付けられ、資源や原材料の調達が比較的容易で、一通りの機械設備が整っている東北地区の国有企業に対する期待が高まっている。
瀋陽機床は現在、市政府の支援を受け9つの工場を郊外の開発区に移転させる作業を進めている。政府は、瀋陽機床の工場敷地を1平方メートル当たり3,000元で買い取る一方、開発区の76万平方メートルの土地を同200元で売却、差益を工場建設に充当させる。広大な敷地には2006年末までに20棟余りからなるアジア最大規模の工作機械工場が誕生する見通しだ。
ただ、この会社が5年後や10年後も業界トップの工作機械メーカーであり続ける保証は無い。まず国有企業の宿命ともいえる親会社に対する債務保証や未収金が未解決のままになっている。特に同社のような上場企業はグループの資金調達機能を担わされており、問題が常態化している。また、製品は殆どが国内向けで国際競争力が備わっていない。東北地区はエネルギーや原材料は豊富だが製造設備は老朽化している。政府はデジタル制御、全自動の生産ラインの導入を奨励しているが、同社の資金面の見通しは不透明だ。コスト競争力の優位性は早晩限界を迎えることが予想され、自主開発能力の向上も急務だ。これは同社に限らず多くの中国企業に共通の課題となっている。
全人代で審議中の新五カ年計画では、東北地区の工業化のほか西部大開発、中部新興、、東部の発展継続という既存の地域発展戦略は維持する一方、全国を人口、資源、潜在成長力等により分類し、それぞれの地区に適した発展を目指す新たな方向性も示された。従って、今後東北地区においては、従来沿海都市がやってきたようなエネルギー浪費型の工業化は容認されにくくなる。企業は省エネ・環境保護のための新たな投資を迫られよう。瀋陽機床は東北の国有企業ゆえの様々な制約の中で、世界的な工作機械メーカーに飛躍するための模索が続こう。
MSN-Mainichi INTERACTIVE 中国
