原さん拉致事件:「身寄りなし」狙い 中華料理店主が紹介 | trycomp2のブログ
「祖国(北朝鮮)で要求している条件に合っている」。警視庁の家宅捜索を23日受けた大阪市の中華料理店店主(74)は、そう言って自分の店で働く原敕晁(ただあき)さん(行方不明時43歳)を、北朝鮮元工作員、辛光洙(シングァンス)容疑者(76)らに紹介したとされる。孤独な人物に狙いをつけた巧妙な拉致工作。26年を経て、国内協力者に初めて拉致容疑での強制捜査が入った。【石原聖】
原さんは長崎市生まれで、幼いころ母が死亡。父も少年時代に亡くなったとされる。高校卒業後は親族との付き合いもほとんどなかった。大阪市天王寺区の中華料理店に勤めたのは80年初めごろ。当初は別の人が経営していたが、その後間もなく今の店主になった。店に原さんを訪ねて来る知人もいなかった。「工作員が身代わりとなってなりすますには、格好の境遇だった」。警視庁公安部幹部は指摘する。
辛容疑者は85年、原さんになりすまして韓国に潜入したところをスパイ容疑で逮捕され、死刑判決を受けた(その後恩赦で北朝鮮に出国)。韓国での公判記録には、拉致の様子が生々しく記されている。
それによると、辛容疑者は80年2月、北朝鮮側から「日本で身代わりを見つけ韓国の情報を収集するように」との指示を受け、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)傘下の在日本朝鮮大阪府商工会の当時の会長(既に死亡)に拉致対象者を探すよう依頼。会長が同商工会理事長だった店主に相談した。
店主は「自分が経営する中華料理店の店員が祖国で要求している条件に合っているので、この人物を送るのはどうだろうか」と会長や辛容疑者に紹介。辛容疑者は原さんの戸籍謄本を入手して身寄りのないことを確認し、「これ以上ない対象者だ」と思った。
辛容疑者は80年6月、架空の貿易会社への就職という口実で原さんをおびき出した。商工会会長が貿易会社社長、辛容疑者が専務に、元工作員(78)=韓国在住=が常務にふんし、JR大阪駅近くの飲食店で面接した。
「この金で旅行でもして数日後に会おう」と会長が100万円を渡して立ち去った後、店主と原さんは夜行列車で宮崎へ。宮崎市のホテルで辛容疑者が原さんを「散歩に行こう」と海岸に連れ出し、北朝鮮へ拉致した。
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北朝鮮側は02年9月の日朝首脳会談で「工作員が原さんの戸籍謄本を受け取る見返りとして100万円を支払い、北朝鮮へ入国させることを約束した」「原さんは、金もうけと歯科治療のため、海外行きを希望していた」と本人の意思による入国を主張している。
原さんの兄耕一さん(79)=長崎市=は「政府や警視庁がやってくれていることに感謝するだけ。捜査の結果が出るまでコメントすることはない。ただ(捜索で)なにか証拠がつかめれば、と期待している」と語った。
◇「公権力の乱用」強制捜索に朝鮮総連が反発
強制捜査には朝鮮総連関係者らから反発の声が上がった。
30代の在日朝鮮人男性は「大変深刻な事件だと思うが、20年以上前の出来事に対する捜索が真相解明につながるのか疑問で、政治的な意図を感じる。そういうことがまかり通る今の風潮は、在日の生活基盤を揺るがしかねず、脅威を感じる」と話した。別の40代の男性も「店主が朝鮮総連の傘下団体の幹部だといっても、団体が拉致にかかわったわけではなく、捜索は不当だ」と語った。
朝鮮総連中央本部は「(捜索は)拉致問題を在日朝鮮人や朝鮮総連傘下団体と意図的に結びつけようとする悪質な世論操作。ある中華料理店経営者が26年前に商工会の理事長をしていたというだけで、今日に至って同会を強制捜索したことは、まさに公権力の乱用であり暴挙である」とのコメントを出した。
◇全容解明に期待…被害者家族会メンバーら
拉致被害者の家族会のメンバーらは、強制捜査が入ったことを評価し、拉致事件の全容解明に期待を込めた。
原さんの兄耕一さん(79)は自宅のある長崎市で「政府や警視庁がやってくれていることに感謝するだけ。捜査の結果が出るまでコメントすることはない。ただ(捜索で)なにか証拠がつかめれば、と期待している」と語った。
家族会の横田滋代表(73)は「北朝鮮に対する圧力は間違いなく強まっていると感じる」とコメント。増元照明事務局長(50)も「ようやくここまで来た。拉致に協力した在日朝鮮人らには、今こそ勇気を出して真相を語ってほしい」と望んだ。
毎日新聞 2006年3月23日 13時20分
原さん拉致事件:「身寄りなし」狙い 中華料理店主が紹介-事件:MSN毎日インタラクティブ
