コミティア92同人ソフトレビュー「スターリーカラーズ 一章」 | でたとこTRY@CATCH!

コミティア92同人ソフトレビュー「スターリーカラーズ 一章」

初回から随分間が飽きましたが、続けていく。

今回は、星団ファミリーさんの「スターリーカラーズ」
選択肢のないビジュアルノベル。ノベルジャンルは、青春セミファンタジーとでも呼ぼうか。

手に入れたソフトは、「一章」「二章」「最終章」「イベント特典」というてんこ盛りの内容だったが、
ひとまず、「一章」をプレイした感想を。

何度もセーブしつつ毎日少しずつプレイしていたけれど、
恐らく、総プレイ時間は5時間を超えたんじゃないだろうか。
もっとかな。10時間近いかも。とにかく長かったなぁという印象。

バレー部を立ち上げようとする男女の青春ストーリーで、
いわゆるカノン系の、日常の生活の中にちょっと不思議な現象起きてますタイプ。
登場人物の個々のエピソードを、登り詰めるように語り終えた後、
メインヒロインのエピソードが表に出てきて、その解決が物語の終幕と直結するという形式も、まさにカノン、クラナドなどを想起させる。

メソッドが確立されているだけに、物語の進行に違和感はなかったし、
ノベル作者の筆力がなかなかのもので、下手なひとが書くとすぐに中二的な語り口になってしまう若い主人公の一人称を、
落ち着いた筆致で書ききっているのは見事だ。

さらに褒めてしまえば、
この作者は、ストーリーテリングの力も高く、特に暗い話を描くときの求心力は抜群。

名作、傑作をかける下地は持っている作者だ。

ただ、もったいないのは、なぜか無駄な描写をたくさん書いてしまったことだろう。
まずユーザーの興味を惹きつけなければいけないはずの序盤から、しばらくの間、退屈な話が続き、
一度、登場人物の内面に肉薄する物語が挿入され、グッと興味を惹かれるのだけれど、
そこからまた冗長な展開になってしまう。
登場人物たちの会話はもう少し要点を絞って進めて欲しいし、
バレーの試合にあれほどの文章量は果たして必要だっただろうか。少々疑問だ。

終盤は目の離せない展開となり、好印象。

と、ノベル部分は及第点なのだが、背景と立ち絵がちょっと厳しい。
女の子は変に巨乳な幼児体形の四頭身でとても不自然なのだ。格好良い男キャラとのギャップが激しい。

背景には実写を用いていて、これが意外とマッチしているのだけど、
夕暮れのシーンや夜のシーンを表現するのに、昼間の写真をRGB調整しただけというのは、ちょっと手抜きだったか。

それでも、場面変換は丁寧に背景を入れ替えて、移動がうまく表現されていたし、
時間経過も自然で分かりやすい。
それ以外にも演出は基本的に丁寧で、物語の息継ぎ部分にはしっかりフェードが入っているし、
効果音、揺れ、キャラ絵の変更など、長い物語の中、これを全て入れ込むのは相当手間だったろうなぁと作者の労苦が伺える。

細かいところに手を入れてあるだけに、大作感がある。
立ち絵、背景にやや不満はあるものの、作者の筆力と帳消しで、全体的には良く出来ていると評価できる。
星団ファミリーさんのサイトを見る限り、
二章からは立ち絵のクオリティがあがっているし、恐らく作者の筆力もあがっているだろうと考えると
二章と最終章はかなり期待できるのではないかと思った次第。