コミティア92同人ソフトレビュー「探偵のすすめ『笑うブドウ編』」 | でたとこTRY@CATCH!

コミティア92同人ソフトレビュー「探偵のすすめ『笑うブドウ編』」

コミティア92で手に入れた、ソフトレビューを書いていこうかと。
一発目は、たんすかいさんのビジュアルノベル、「探偵のすすめ『笑うブドウ編』」

この作品は、とにかく完成度が高いの一言に尽きる!
ボリュームに目を瞑れば、商業ベースに乗っていてもそう違和感はないレベル。

まずBGMが良い。メニュー操作時のSEも柔らかくて心地よい音だし、
シナリオの変化に応じて、適切なフェードと自然なBGM変更には、安定感がある。
ED曲まであるのにはびっくり!
しかもかなりしっかりした曲で、歌つき。しかもこれまた良いんだな。これ素晴らしい。
最近の同人ソフトはここまでやるものなのかと、変に感心するくらい。

そして、メニュー周りのシステムも使いやすく、ビジュアルデザインも落ち着いていて
これまた出来が良い。
セーブ・ロード時に再会地点の背景スクショが見えていたり、人物紹介があったり、
エトセトラメニューでは、制作者のあとがきや、ED曲の再生ができるなど、ユーザビリティ面の気遣いは、堂に入ったもの。
スクリプターの手心なのか、プロデューサーの指揮によるものなのか、知りませんが
どちらにしろグッジョブ。

立ち絵が複数人になったとき、誰が喋っているのか一目瞭然な仕組みもなかなか。

ただし、肝心のシナリオは上記イメージ面でのクオリティについていけていない印象。

小説・シナリオにおいて、最も重要な要素である「視点」が、このシナリオでは定まっていない。
そのため、主人公は誰? というところを、ユーザーがすぐに判断できない。
どうやらシリーズもののようなので、前作までを追っているユーザーは分かるのだろうし、
パッケージを見ればなんとなく分かるのだが、それはシナリオ内部に含めなければいけないところ。
95%が会話文で成り立っており、一見、完全な神視点かと思えば、そうではなく、
突然、登場人物の一人の心情が地の文として登場するなど、混乱する。

登場人物らはキャラ立ちしていて、それも落ち着いた設定なので、この辺は好感触なのだけれど、
ミステリであるのに、魅力的な謎や、中盤のサスペンス、解決時のカタルシスが一切ないところは残念。
ヒューマンドラマ的な展開もなく、ただあらすじを追っているだけになってしまっているため、
キャラクタ同士のコメディタッチのかけ合いを楽しむシナリオ、という位置づけになっている。


逆に考えると、誰でもライト感覚で楽しめるシナリオと言えるのかもしれない。
プレイ時間も、30分~2時間くらいで、飽きない程度にまとまっている。
シナリオ中、ところどころクリッカブルマップによる選択肢が用意されていて、
ユーザーを世界観に引き込む効果が出ているし、これがあるために、単調にならずにシナリオを進められる。
この辺の感覚は素晴らしい。