台湾出身の作家、邱永漢(きゅうえいかん)氏死去。

自身も実業家でお金持ちだった氏は、お金儲けのハウツー本も数多く書いた。

以前にも「老いと若さ」の題で書いたが、氏の、「20才の若者が70才の大金持ちに、私の若さをあげるからあなたの全財産を下さい。」の例え話が印象的だった。

氏の答えは「半分ならあげるが、全財産はあげられない」だった。

それを読んだ当時、若かった私はその答えが解せなかった。単純に、「20才の若さがもらえるのに、もつたいない」と思った。

この例え話、多くの示唆に富んでいる。

「半分だったらあげるが全部はいやだ」と言った氏の答えには、経済的にも社会的にもある程度の地位にあることも影響しているかもしれない。

では、経済的にも社会的にも恵まれていない不本意な境遇の老人ならどう答えるだろう?

待ってましたと二十歳に戻っていくだろうか?

案外、「やり直しはくたびれるな」と二の足を踏むのではないだろうか?

邱永漢氏享年88才。

こころよりご冥福をお祈り申し上げます。