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へつり 写真はA師匠

沢を遡行(そこう、さかのぼること)すると、こんな傾斜の壁に出くわします。万が一落ちても危険がないところと判断すれば、へばりついて、蟹の横歩きのように渡って行きます。これを沢登りの用語で、「へつり」と言います。

我が、きのこ採りの師匠は、時にこんな「沢登リスト」も真っ青の課題を与えます。

このあと、師匠に続いたのですが、ちょうど「大」の字の構えで渡っている時、突然左手のつかんでる石がはがれて、左開きのドアのように体が振られてしまいました。

一瞬「落ちるだろうな。でも、落ちても浅い滝つぼ。冷たいけど、ま、死にはしないだろうな」と、いつものように諦めようと思ったのですが、「まてよ、今時分、水は冷てえな」と思い、右手の指先に力を入れて踏ん張ってみたら、意外なことに踏みとどまれたのです。

「雪山で遭難死する人は意外に苦しくない」と言うのが、ボクの持論ですが、何故かと言うと、なんとか生還しようと思って雪の中をさまよっていて、精魂尽き果て、「この苦しみから逃れよう」と思った時に、楽になろうとして訪れる死だから、そうじゃないかと思うんですよ。

結構長く生きてくると、日常の出来事でも、沢をへつっている時のように、時折「ま、いっかな?」なんて心境になることも多いんですよ。

でも、先日のように渾身(こんしん)の右手で踏ん張れることもあるんですから、「こんな力もあったんだ、も少し人生楽しもうかな?」とも思う今日この頃です。