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曼珠沙華

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父さん竹の葉 母さん蓮の葉
竹葉蓮葉の 枯れたあと
残るわれらは どうなろう。

あれへ行かれる 老爺(おじい)さん
どうぞ ことづけ たのみます
冥土(めいど)とやらへ 行ったなら
うちの父さん 探し出し
雪の降り積む 寒空(さむぞら)に
四つばかりの 幼児(おさなご)が
単衣(ひとえ)はだしで 泣いてたと
草履(ぞうり)を編んで 送るよう
どうぞ ことづけ たのみます。

あれへ行かれる 老婆(おばあ)さん
どうぞ ことづけ たのみます
もしも 冥土(めいど)へ行くのなら
うちの母さん 探し出し
風吹きすさぶ 冬の夜に
やっと二つの 幼児(おさなご)が
お腹飢(なかひも)じゅうて 泣いてたと
小さな 小さな 円甕(まるがめ)に
乳を絞(しぼ)って 送るよう
どうぞ忘れず たのみます。

近い山では 雨が降り
遠い山では 雪が積む 
母さん 母さん 呼んだれど
山の反響(こだま)が 鳴るばかり。   朝鮮童謡選 金 素雲 訳編  「岩波文庫」より

朝鮮半島が日本の植民地になっていた時代、金素雲は、埋もれていた朝鮮の童謡や民謡を採集し、日本語に訳して紹介しました。

現世は時折、こんな悲しさ、残酷さも見せてくれます。

冥土があるのかどうかはわかりませんが、もし冥土があったなら、こんなことづけも、楽しかったことと共に伝えたいと思いますね。