野球少年だった。
体格は良かったが、運動神経は今ひとつだった。中学生になっていた。
コーチとか理論を教えてくれる人はいなかった。
そんなある日、事務職員の方か、たしか顧問以外の先生がバッティングピッチャーをしてくれていた。
内角高めの、打ちやすい球ばかりを投げてくれた。
何度も打っているうちに、ボールが一定の位置にきた瞬間にバットを振るとうまく打てることに気がついた。
のちにわかったのだが、それは、タイミングやポイントと呼ばれる「打撃の極意」だった。
運動神経の悪さは、あらかじめ外角にくるか、内角にくるか予測して克服した。
控え投手で、上級生唯一の補欠が無敵になった。
野球少年の脳裡に、「プロ」の二文字までちらついた。
上に進むにつれ、投手の球が速くなってきた。
「ここだ!」とバットを振った時、ボールは「極意」の位置を過ぎることが多くなってきた。
早熟の野球少年にとって、大人になるにつれ球が速くなるのは、想定外だった。
・・・・ン十年後経った今、
草野球をしている野球中年は、元プロ野球選手とは呼ばれていない。