こお(これ)はむかしあったど。

あるところに仲のいい夫婦があったど。ある時亭主が「お伊勢参り」に出かけました。

途中「一口千両」という看板があったので入りました。

千両の金を払うと、「柱のねえとこは油断するな」と言われました。

もの足りなくなってもう千両払うと、「急がば廻れ」言われました。

お金をいっぱいとられた亭主は、やけくそになってもう千両払うと、「ならぬ堪忍、するが堪忍」と言われました。

ばかにされたと怒って道を急ぐと、カミナリが鳴りました。ちょうど岩穴が見えたので入ろうとしましたが、「柱のねえとこは油断するな」を思い出してやめると、岩穴は音をたてて崩れました。

さらに道を急ぐと渡し場があったので舟に乗ろうとしましたが、「急がば廻れ」を思い出して橋に向かうと、舟が川の真ん中で沈みました。

やっとのことで家に着いて「がが(妻)なにしているんべ」と家の中をのぞくと、女房のとなりにほっかむりをした男がいて、妻が男にあんまをしているように見えました。

かっときましたが、あの「ならぬ堪忍、するが堪忍」を思い出し、心をしずめて戸を開けました。

しかし先ほどの男はいません。

「女一人では、無用心だから、人形にほっかむりさせていたのっしゃ」と大きな人形を見せて妻が言いました。

亭主は三千両は安かったと思いました。


・・・・・「民話の平泉」のお話、著作権侵害はこれで終わりにしたいと思います。H氏は平成6年5月17日に亡くなられたとありました。

直接お会いすることはできませんでしたが、この本に出会えてボクは幸せです。ご冥福をお祈りいたします。

今、桜前線は関東平野あたりでしょうか?

通り過ぎた桜を追いかけて、あの平泉のおばあさんに会いにいきたいな。と思っています。