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 今日は「江戸散歩」の最後に、神保町で買った双葉山著「相撲求道録」について記そうと思います。

 平成21年の大相撲九州場所は、横綱白鵬が全勝優勝を飾りました。その白鵬が目標とし、尊敬してやまない力士が、今回買った本の著者、昭和の初期に活躍した、69連勝で有名な双葉山です。

 その双葉山が、70連勝を阻まれた日に打った電報「イマダ モッケイ タリエズ」はさらに彼の名を有名にしました。普通文に直すと「未だ 木鶏 足り得ず」で、まだ木で作った鶏にも及びませんと言うことなんでしょうが、ボクは詳しい逸話を知りたいと思っていました。この電報は、友人が打った「サクモヨシ チルモマタヨシ サクラバナ」に返したものでした。

 神保町の古書街では、所用のついでですから、決めた本を探しに行くことよりも、こんなことが多いんですよ。
 
 例えば池波正太郎が「江戸切絵図散歩」で書いた一説「名著深川区史」なんていう言葉も、いったい「区史」や「市史」に名著があるの?なんて疑問が、長い間引っかかっていて、行った時にそれを見つけて買ったりするんですよ。

 木鶏の話は、中国の古典「荘子」「列子」に出てくる寓話で、王が「紀」という闘鶏飼いの名人に、闘鶏を預けた話でした。
 
10日後
    
王 「そろそろ使えるか?」   

紀 「ダメです、空威張り(からいばり)の最中です。」

10日後

王  「 もういいだろう?」

紀 「まだダメです。相手を見ると興奮します。」
 
さらに10日後 

王  「もういいか?」

紀 「まだまだダメです。相手を見ると、何、此奴(こやつ)がと、見下すところがあります。」

その10日後  

王 「もうそろそろいいだろう?」

紀 「よろしゅうございます。相手が挑戦しても一向に平気です。木彫りの鶏のようで、徳が完全でございます。どんな敵も応戦せず退却するでしょう」

 そんな、悟りの境地を開くという逸話で、面白い話でしたが、期待外れと言えば期待外れでした。でも良く考えると、この逸話に悟りの境地の全てが書かれていると思う方が、虫が良すぎますよね? 
  
 双葉山はこの逸話を、安岡という心酔していた人から聞いたそうですが、彼は思想家だった安岡氏の話を熱心に聴く人だつたそうですから、安岡さんもいろんな話を聞かせてあげたそうです。

 その負けた日、友人宛てに「サミシイデス スグオイデコフ」の電報も打ったそうです。彼はいい友人にも恵まれてもいましたね。

 ボクのブログの読者なら、そろそろわかってきましたね。


 そう!タイトルは「相撲求道録」。彼は常に求めていたのです。「心 技 体」全てを、貪欲に追求していたのでした。その姿勢こそが彼を大横綱にし、いまも「双葉山伝説」として語り継がれているのでした。

 「ワレ モッケイタラントホッスモ マヨイハナハダシ イマダ アシモトニモオヨバズ」です。でも、気持ちだけは持ち続けたいものです。