長い傘を持った男性が、立っている私の横に並んだ
荷物は足の間に置き、傘をつり革のついている横棒にぶらさげた
長い傘だったので、電車が揺れるたびにぶらぶらして、前に腰掛けた人の頭にあたりそう
危ないなと思っていると、ぶら下げる場所をずらした
自分がつかまっている吊り輪の外側だ
電車が出発すると、傘はゆれながらつり革ひとつ分移動してきた
私のつかまっているつり革まで来てそこで揺れている
やっぱり!思ったとおり
持ち主の男性は気がつかない
私のそばまで寄って来てゆれている傘を見ながら、電車が停車するときのことを想像していたら
可笑しくなってしまい、私はひとりにやにやしていた
この人が降りるまで何往復するのだろう
やがて、とんでもないところに移動している自分の傘に気づいた男性は
私が何も言わないのに
「わかりました」
と言って傘を手に持った
私は思わず口に出してしまった
「出発するときにこっちに来たから、止まるときはそっちにに戻るかしらと思って」
そこまでは確認したかったのに・・・・
星美