白川 道

終着駅

 

小説を読んでいるうちに「緻密な設定の内容だな」とか「言葉使いがうまいな」とか作家の個性が見えてきます。

「終着駅」は「緻密な内容ではありません」 「言葉使いもキザに思えます」それでも感涙するほど引き込まれてしまいます。

それは主人公がとても人間くさくて、キャラクターの配置が上手だからだと思います。

父や母、恋人の死から生というものに執着を無くしたヤクザと、事故で両親を失い自分も視力を失ったのにも関わらず、前向きに生きる女性との恋愛小説です。

親子の絆とは何か、生きている価値は何か2人のフィルターを通して見えてくる世界観は、問題なく生きている人間には気づかないことを教えてくれます。

志賀直哉「暗夜行路」が自分というものを探し求めた傑作であるならば、これは自分に関わるものをつうじて生と死を書いています。

忙しい毎日の中で考えることもできない人間と人間の関わりを再認識させられました。

ちなみに「綿密な内容」ではないので、盲目の方に知識やヤクザの世界は主人公の知識レベルで話されているため、設定がわからないこともありますが、逆にそういったことを伝えたい小説ではないと思いますので読みやすいのかなと思いました。