ありとあらゆる親不孝をしている最中、父は三年前に他界した。
永遠に存在すると思っていた有機体が、はじめからそこに存在していなかったように、家の中自分の世界からなくなってしまった。
父がいたことを証明するのは、誰も着ることがない背広と写真から辿った記憶、それに失敗作であるわたしだけだ。
18歳の頃、わたしは父とケンカをして家を飛び出したことがある。
家出といっても新しく生活をはじめるわけでもなく、今でいう「プチ家出」に他ならなかった。
わたしは麻雀だけは自信があり、1週間ほど雀荘に住み着いて生活をしていた。
それでも18歳の勢いの麻雀に変わりはなく、半荘100回を超える頃には疲れと経験の差、それに窮地での甘さのせいか、飯を食い損ねる日が多くなった。
結局自分の中で「洋服を取りに行くだけだ」と言い聞かせるように口実を作り、家に帰ることにした。
家に帰ると電気もつけない薄暗い部屋に母がいた。
母はいいたいことがたくさんあるようだったが、わたしに1番最初に手紙をみせた。
「あいつを探しに行きます。父より」
それは万年筆で走り書きされた、達筆であったはずの父が書いた手紙だった。
ワープロでは表現できない、動揺を隠せないような文字が震えていた。
父はわたしが家出をしているあいだ、同じように家にも帰らず探し回っていた。
家に1日何十回も電話を母にかけ続けていたのだ。
そんな父に生前父の日に贈ったものは、タバコぐらいしか記憶にない。
そうそう父が他界したその年に限って手紙を書いたことを覚えている。
1回だけでも手紙で「父さんありがとう」と伝えられて本当によかった。
今年も父に手紙を書こうと思う。
もちろんタバコも添えて…