「松平右近事件帳 最終回」(1983.3.20 OA) | All the best for them

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「三つ葉葵を貫く銃弾」



10日に時代劇専門チャンネルで放送された分の記録です。

時代劇の最終回って、だいたいが将軍暗殺計画だとかテーマが大きなものが多い。

私が知る限り、時代劇でのゲストの根上さんは、

50代のころは、メインではやくざ系か悪徳商人といった町人が多くて、

60過ぎてからメインというよりは、

息子娘がメインでその親役っていうのが大半だったから、

タイトルから想像出来る銃弾の主であろう根上さんってどんなんやろ?と

わくわくしていました。



松平右近というのは将軍の実弟だそうで、

藪太郎という名で町医者として市井の人々の暮らしを見守っているという次第。



今、江戸の中心では若い娘が相次いで行方不明になる事件が続いていた。

いずれも夜中に自分でこっそり家を抜け出し、いなくなっていたのだ。

ある夜、偶然船の上から現場を目撃した梅吉の証言によると、

娘は一人でのこのこと橋の上までやってきて、

そこに侍たちが現れて、用意していた籠へ無理やり押し込み連れ去ったらしい。

そんな中、城のじいが中間を伴って、藪太郎として長屋に住む右近を訪ねた。

将軍である兄上からお呼びがかかったのである。

登城した右近は、兄から、補佐役として側にいてほしいと頼まれるが、

右近は丁重に断る。

百鬼夜行の江戸の町では、

今も若い娘が次々拉致されるという怪事件が起こっている。

出来ればそれを自分の手で解決したいと、右近は兄に打ち明けた。



さて、廊下の向こうから坊主を先導に歩いてくる恰幅のよいお武家さまが。

正面から歩いてきた右近に一礼して通り道を開けたその人に、

声をかけた右近。 ああ、有馬阿波守どの。

「はっ、ご記憶いただき光栄に存じます」 

と、精悍な顔つきで挨拶したのが根上さんでした。

貴殿、確か若年寄に…

「おかげを持ちまして、昨年から務めさせていただいております」 

頭を下げる阿波守。

他の方たちと力を合わせて何とぞ兄上を盛り立ててほしいと頼まれると、

「はっ、身に変えてお尽くしいたします」 とうやうやしく応えた。



真っ直ぐに右近を見据えた阿波守どのは、

すんません、私はもっとおじんっぽいのを想像していたのですが、

考えてみたら根上さん60歳ぐらいなので、そう老け込んでもなくて、

肌つやもよく、重厚感を醸し出しつつ颯爽とした様子も見受けました。

伊吹隊長が年を重ねたら恐らくこういう雰囲気になるんやろなあと

思わず見とれてしまったなあ。



で、右近に出会った阿波守は上様の元へ。

「上さま」  そちか。  

「はっ。先ほど廊下で右近さまにお目にかかりましたが…」

と、ひざまずく阿波守。

見事に断られた。 と上さま。 「は?」

城へ来いと言ったんだが、市井の暮らしが性に合ってると言いよった。

「さようでございますか…それはご落胆でございましょう」

ああいう存在が町の中には必要なのじゃ、それがよく分かった。

「と申せられますと?」

善を助け悪をくじく陰の働きをしとる。

今は拉致された町娘のことに関わりあってるとか申したな。

ふふふっ、あいつらしい。

と、ここで何やら不穏な音楽…

上さまを見上げていた阿波守は表情を曇らせ、顔を伏せるのだった。



夜、屋敷に戻った阿波守は落ち着かない様子で晩酌中。

イラつき、盃を畳に投げ捨てると立ち上がった。

そこへ、殿、と廊下から声がかかった。 阿波守は振り向く。「玄馬か?」

大股で障子に近づくと、障子が開いて玄馬が顔を出した。

(水戸黄門なんかでいつも悪役で出てくる人です、ここでも案の定ですな)

「首尾は?」  ご安心くださいませ。 

阿波守は玄馬の後をついて、縁側に出てきた。

庭先には、じいのお伴で右近の長屋に出向いた中間がいた。

玄馬が右近の住まいを尋ねると、

中間は渋りながらも、藪太郎と言う名で神田の浮世小路に住んでいると答える。

それを縁側に立って澄ました顔つきで聞き入っていた阿波守。

中間が話し終えると、

「褒美を取らせる」と右袂から小判を取り出し、チャリンとばらまいた。

この様子が、非常にふてぶてしくてグーなのだが。

小判を拾い集めた中間は、哀れ、予想通り玄馬に斬り殺されてしまった。

阿波守ときたならば、すっとぼけた表情で、そっぽを向いて歩いていってしまう。

自分の手は汚さず我関せずなのですが、

それを物語る背中と足取りが何とも最高でした。



そして…往診帰りの藪太郎が覆面侍の集団に襲われて…

もちろん藪太郎はめっぽう強いので、敵はあえなく退散でしたが。



で、屋敷にて。廊下をどんどこ鳴らしながら歩いてきた阿波守。

「仕損じたと?」 険しい表情で、庭先で首を垂れる玄馬を叱責する。

たかが一人とあなどって、申し訳ございません。

「申し訳ないですむと思うかっ! 万一こちらのことが知れたらどうするつもりだ?」

阿波守は拳を震わせた。

次なる手を講じ何とか仕留めますゆえ…と玄馬。

阿波守は、高ぶる気持ちを抑えることが出来ず、

傍らのついたてをバンとたたくのだった。



元・忍びの清太郎は、襲われた藪さんの身を案じた。

藪太郎を襲ったのも侍で、娘をさらったのも侍。

2つの事件には何か関わりがあるのだろうか…



さて、悪者どもが考えた次なる手…それは西洋の銃を利用すること。

もやの立つ原っぱに、囚人たちが役人に連れてこられた。

木陰からじっと見つめるのは兜を被った阿波守に、金髪の南蛮人。

竹藪に逃げ込んだ者は、命を助けてやる。

役人にそう言われて、みな一斉に走り出すが…

阿波守、鞭を構えると、鉄砲隊に目線を送り、囚人どもを見ながら

鞭を振り下ろした。

合図を受けて、鉄砲隊がバンバンと一斉に銃弾を放つ。

囚人たちは一人残らず銃の餌食になってしまった。

阿波守は真っ先に遺体に駆け寄る。

「見事じゃ。火縄を使わずに撃てるとは、恐るべき稼業じゃ」

この銃が百丁もあれば…と玄馬。

「いずれ各地に倒幕の狼煙が上がる。その時には大いに役に立つぞ」 はっ。

阿波守、交換条件はどうなった? と金髪さん。

「準備は出来ておる。これからわしの下屋敷に案内する」



その下屋敷にて、地下へ降りる阿波守たち。

そこには拉致された町娘たちが…(こういうからくりでした)

娘たちは、オランダの日本館で働かされる運命らしい。

いやらしい笑みを浮かべる南蛮人、絶対ヘン…

一方、阿波守さんは、女子よりも倒幕のほうに興味があるようで、

地下でも終始厳しい表情。これは救いだったかも。

ここで阿波守も鼻の下伸ばしてたら、かなりイメージダウンやもんなあ。

でも、先ほどの鉄砲隊に合図を送る阿波守は、

さすが元MATの有能な指揮官だけあって、決まってましたねえ。

血も涙もない奴だけど、ぐっとかっこよかった…

しかし倒幕を考えていたとは、結構大胆なのね。



一方、藪さんと同心の必死の探索の結果、

町娘は皆、淨海という祈祷師の元へ通っていたことが分かる。

藪太郎にホの字のおらんが、祈禱所へ潜入した。

おらんが、藪太郎との恋を成就させたいと、悩みを打ち明けると、

淨海は、誰にも告げずに今夜子の刻、こととい橋へ来い。そしたら恋が叶う

と、催眠術をかけた。



有馬邸にて、淨海はおらんのことを玄馬に話す。

おらんの口から、藪太郎の名が出たことで、これは罠だと気付いた玄馬は慌てる。

そこへ阿波守、「騒々しいぞ、何事だ!」 と怒鳴ってきた。



藪さんたちは、こととい橋に向かうおらんを尾行するが、敵は現れず。

そのまま淨海の祈禱所へ向かったが、そこももぬけの殻だった。



淨海は有馬邸に身を寄せていたのだ。

「よいな、二度と失敗は許されんぞ」 と阿波守。

明日、仕上げをご覧にいれます。 と玄馬。

「淨海!」 はっ。 「邪魔者が片付いたら又、働いてもらう。

それまでわしの側におれい」  阿波守はそう言い捨てて出て行った。



右近は、城のじいを呼び出して、じいに近況を報告した。

じいは、賊が、藪太郎が右近と知った上で襲ったことを聞かされ驚く。

右近が藪太郎であることを知っているのは、じいだけなのに…

そこにふと思い当ったのが、じいが伴った中間の存在。まさか…?

しかも彼はあの夜逐電したとか…

彼が通報したとして、その相手は一体誰なのか?

そいつはあの日、右近が兄上と対面したことを知っている人物。

ここで右近の脳裏に浮かんだのが、

城の廊下で出会ったすまし顔の若年寄・有馬阿波守。

俺は兄上に巷で起きている事件のことを話した。

俺を消そうとした奴らは、そいつを兄上から聞いて、

まずい、と思った奴さ。 やはり2つの事件はつながっていた…



藪さんは今後の対策を立てるために、清太郎と2人、

清太郎の妹・おさよが営む小料理屋へ。

だが、おさよと女中のおきみは、有馬の手下に拉致されてしまっていた。

残された手紙には、

「夜明けに鬼追峠南・不動が原へ一人で来い」とある。

夜、清太郎は身代わりになると申し出るが、藪太郎の決意は変わらない。

地理に詳しい清太郎は、村はずれにある二股道のことを藪太郎に教える。

二股道を左に行けば不動が原に出るが、

右へ行くと遠回りだが辺りが一望できる崖の上に出る。

そこから敵の出方を探るように、と。



そして朝、葵の紋入りの白い着流しに身を包んだ、深編み笠姿の右近が

不動が原へと向かった。

だが、清太郎が教えた、二股道を左に行く人物は…?



さて、おさよ・おきみが捕らわれている不動が原に、籠が到着。

殿、と策謀担当の玄馬が出迎えた。

籠から降りたのは頭巾姿の阿波守。

「奴の最後をこの目で見届けたいと思ってな」 なんだそうな。

「あの女たちか? 

奴は間違いなく来るのか?」 と話しながら刀を腰に納める阿波守。

はっ、必ず。 と玄馬。

「よもや討ち漏らすことはないであろうな」 

それは絶対に。武器がありますから。 と丘の上を指さす玄馬。

阿波守もそっちを見て、「ああ、なるほど」 

そしておさよたちの方へと向かう。 そこへ、来ました~と手下の知らせが。

現れた深編み笠の人物を、じっと見つめる阿波守。

そして頭巾をすっと取り外すと、そいつにゆっくりと近づいた。

「わざわざお越しいただいた上、まことに恐縮ではございますが、

是非ともお命を頂戴。藪太郎などと名乗って色々と嗅ぎまわられては

この阿波守、先々まで迷惑いたしますゆえ」

(なんか、ほんまに自分勝手な阿波守ではございますが、

根上さんが実に嫌味ったらしく味のある話し方をするので、

思わず拍手したくなるほど)

玄馬が合図を送り、銃弾が一斉に放たれた。

たちまち餌食になってしまい、倒れたその人物。

皆走り寄って、玄馬が笠をはぎ取ると、現れたのは清太郎。

はっとする阿波守。

ここで、崖の上から右近参上、というわけで、

崖を降りてきて怒りの剣をふるう。

走り寄ってきた阿波守も剣を抜いて構える。

右近を厳しい表情で見つめるも、淨海、玄馬とやられて、

とうとう最後の一人となってしまい、追い詰められばっさり、

もたげた籠ごと崩れ落ちてしまった。



…その後は、兄の遺骨を胸に、おさよは故郷へと出発、

藪太郎も、おらんと別れて、旅に出るのだった。



最後ね~、やられることは分かっていたのだけど、

どうせなら、やられるところまでとことん見たかったわよ。

右近を真正面からとらえるためだか、

阿波守だけはなぜか背面からのカット。ここだけはちょい不満でした。

後はね、根上さんの悪役ぶりをたっぷり堪能できたわ。

息子・娘の父親というのも悪くはないのだけど、

やはり単独でのメインというのは嬉しいね。