「暁の合唱」(1955.3.18) 前編 | All the best for them

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好きな人と好きな人に関連するあれこれ、好きな物、家族とのことを細々と、時間があるときに綴っています。





















 

14日に日本映画専門チャンネルで放送された「暁の合唱」。

根上淳さん演じた小出三郎メインで記録しています。

この映画、「泉へのみち」の10日後に公開されているんですね~

どおりで…金沢さんと同じくちょっと渋みが増してきて

雰囲気良かったなあと思ったから。



舞台は東北(秋田の方らしい)。

のどかな田園地帯が広がる田舎のバス道。

女子短期大学受験のため、朋子は級友たちとバスに揺られて

町へと向かっていた。

博労の父、妊娠中の母、小学生の弟の4人家族の朋子の家は

決して豊かとは言えず、朋子は働き口を探すつもりだったのだが、

弟の強い願いもあり、受験する意思を固めていた。

だが実際のところ、まだ迷っていたのだ。



バスが乗り換え地点であるバス会社・東光自動車営業所の前に着いた。

表に掲げられた「女車掌・女事務員募集」の看板をふと目にした朋子に、

考えが浮かんだ。

どうしたの?試験受けないの~?とバスの中から呼ぶ友人に大きく頷いた朋子。

事務所の前で様子を伺っていると、中にいる事務員・米子が彼女に気づいた。

三郎さん、ちょっと。三郎はストーブに当たって雑誌を読んでいた。

ハンチングを被って黒いジャンパーを羽織り、

ツイードのスラックスにコンビの紐靴を履いている。「ん?」

気のない返事をして、立ち上がって窓の外を眺める三郎。

「事によると…かもしれんな」 ニヤッと笑って答えた。「税務署」

まさか~、米子がそっと見ていると、

朋子がつばを手につけて髪の毛を整え始めた。

汚ないッ という米子だが、

三郎はこの目のくりくりした純朴そうな女学生に興味を持ったようで、

早くも鼻の下を伸ばし始めた。

意を決して中に入ってきた朋子。税務署員かと身構えていた三郎たちだが、

求人看板を見てやって来たとわかると、ほっと安堵した。

そして三郎は品定めをするように、じ~っと朋子を見ている。

ほんとは入学試験を受けに行く途中だったけど、やめた という朋子。

「ほほ~、自信を失ったってわけか?よくあるやつさ」と言って、

椅子にまたがる三郎。

ちょっとムッとした朋子は、違います、試験には自信があると。

「じゃあ、どうして?」 そのわけは今度話します。

「ふふふっ、今度ってどこで?」 朋子は返事に窮してしまう。

米子が、身体は丈夫か?と尋ねた。

丈夫でよく食べます。と言う朋子を、又三郎がからかう。

「何杯でも? ふ~ん」

朋子が怒ったので、三郎はちょっと後ろへ引いてしまった。

私、運転手になりたいんです、そのほうがお給料高いんでしょ?

と言う朋子に、又ちょっかいを出す三郎。

「キミ~、キミなんかね~自動車の運転習うより、

男を運転する技術を覚えたほうが早いよ」 まあ…

いちいち気に障ることを言ってくる三郎に、少々立腹する朋子。

これが2人の初めての出会いだった。



無事、バス会社の一員となった朋子は、今日はバスの下にもぐって

点検中。そこへ風船を手にした社長が、趣味の山から戻ってきた。

鼻歌を歌いながらもぐっていた朋子が女であることを知った社長は、

びっくりするが、快活な朋子を気に入った様子である。

三郎は事務所の奥で将棋中。社長の姿が見えて、

「あ~やめたやめた」 湯飲みを持って「あ~おじさん、お帰りなさい」

と声をかけた。

社長は米子に、女の従業員は女らしくしといてほしいと言う。

えっ?と米子。

「あ~例の何杯でも、あの娘のことだ。さっき真っ黒になってたから」

この間入れたんです。運転士になりたいって と米子。

女の運転士か?と社長。

「おもしろいじゃありませんか。

とってもいい娘だからここに住み込みさせてるんですよ」と三郎。

三郎、昼間から油売って~映画館のほうは少しは儲かってんのか?と社長。

「イヤだなあ、おじさん。あんなボロ小屋じゃ儲けるったって」

そこへ従業員で運転の手伝いもしている浮田が入ってきて、

川津の支配人から、と三郎に手紙を渡した。「あっどうも」と受け取る三郎。

どうやら米子は、この浮田に気があるらしい…と米子の様子から

それを社長が察知した。



朋子、初乗りの日。緊張気味の朋子はよろけて客のひざの上に倒れたり、

切符を切り間違えたりで、客にからかわれてしょげてしまう。

そんな彼女を浮田運転士が優しく励まして…

 


夜、朋子、米子、社長、三郎、浮田が鍋を囲んでいた。

(恐らくすき焼き、三郎がでっかい肉をつまんで頬張っていた)

車の中でひっくり返ったんだと浮田が昼間の出来事を話すと、

三郎が「ほお~、そりゃ見たかったなあ、朋ちゃん、こっちへ来いよ」

と誘うが、米子に諭された。

宴会が終わって…

三郎は、おいしいコーヒーを飲みに行こうと朋子を誘い出した。



橋の上に着いた2人…

ハンチングを被ってトレンチコートのポッケに手を突っ込んでいる三郎は

煙草をふかしている。(この姿がめっちゃニヒルなのです恋の矢

彼の後を朋子がついて来て…

「キミはボクが遊ぶしか脳のない人間と思ってんだろうな」 

 そうね、それが一番ぴったりって感じだわ。

「ふふふっ、キミは正直な人間なんだなあ。いい娘だよ」

いろんな女の人に同じこと言ってるんでしょ?

ねえ、恋愛って素晴らしいものなんですか?

「ああ、素晴らしいもんらしいなあ」

 あなたはどうだったの?

「ボク?ハハハッ、いつもそれを夢見ながら結局寂しい思いをさせられたよ」

手すりに腰掛ける三郎。

 つまんないわ…

三郎は吸殻をポトッと川へ投げ込むと、「キミ、もう帰れよ」と朋子に言う。

あら?おいしいコーヒーは?

「もういいじゃないか」 

そお、ホントはどうでもいいの。でも今夜は誰とでも楽しいおしゃべりがしたいの。

どんなくだらない相手とでも…

「ふ~ん」

さあ、行こっ! と朋子は三郎の腕を引っ張った。

あたし、あなたの映画館を探検してやる。 

朋子の笑顔に三郎も元気を取り戻した。

朋子は三郎のハンチングのつばをぐいと下げると、腕を組み、

2人は連れ立って映画館へと向かった…



「ここ」 2階の事務所兼ねぐらへと朋子を招きいれた三郎。

衣類が雑然と置かれた部屋にちょっと驚いた朋子だが、

すぐに壁のポスターなどを興味深げに眺めている。

ハンチングを脱ぎ捨てた三郎は、カーテンの向こうにあるベッドに

みどりが寝転んでいるのに気づいて、愕然とした。

(さあ、ヤバくなってきましたよ~)

黙りこくったままコーヒーを入れる三郎…

空気が濁っている~と仕切りのカーテンを開けた朋子はびっくり!

私、待ってたのよ~と女が言う。

「悪いけど帰ってくれないか」 もうあたしにはご用はないのね。

「僕は惰性で付き合ってんのがたまんないんだ」  イヤになったのね。

「君じゃないんだ、僕が嫌になったんだ。僕自身が」

  へえ、紹介してよ、その人。

「君とは別な星に住んでる人だよ」 

  どんな星かしら?可愛い顔してるわね。こんな顔して!

あんたも見上げた度胸ね。

あたしとサブが切れるところ、自分の目で見届けるって言うの?

「止せ!その人に絡むんじゃない!」

その瞬間、女が朋子の頬をぶった。ピシッ。

朋子も思わずお返し。ピシッ! 

だがいたたまれなくなった朋子は、部屋から走って出て行ってしまった。

彼女が去ってしまい、苦悩の表情を浮かべる三郎…

(悩める三郎が渋いラブラブ!



ある日、バスの中での出産に立ち会った朋子は、

赤ちゃんを産めることはとっても凄くて美しいことだと深く感動する。

そんな朋子を、綺麗で未来がある、と羨ましがる米子。

彼女は芸者上がりで社長に身請けされて、バス事業部を任されているのだ。

朋子は米子に勉強することを勧める、そして先生には浮田さんが良いと。

浮田さんは三郎さんと違って、しっかりしているからと言う朋子。

米子は三郎が最近姿を見せないことを心配して、

お萩を作って朋子に持って行かせた。

ホントは朋子も彼のことが気になっていたのだ。



事務所の三郎は仕事中だった。そお~っと忍び込む朋子。

子犬を見つけて、にっこり。

「じゃあ、これ渡しといてくれたまえ…」

電話が鳴って「はい、小出です。そりゃだめだよ~

やっぱりこの間の打ち合わせ通りやってもらわなきゃなあ。

うん…君の都合ばかり聞いちゃいられないし…だめだよ~

うん、でも今夜いっぺん会ってみようか。まあだめだと思うがなあ。じゃあ」

受話器を置いて振り向いたら、朋子が子犬をなでていたので、びっくり。

 どうなさったの、この犬?

「捕まえたんだ、うちの映画館タダで見てたから。きっとそいつ映画ファンだよ」

 米子さんがどうして三郎さん近頃見えないんだろうと言ってたわ。

悪かったかしら、この間…

「いや、とんでもない。感謝してるよキミに。

虫下し飲んだみたいに苦かったけど。おかげで頭がはっきりしたよ」

 あの人はどうなるの?

「田舎へ帰るって言ってた」 無責任じゃない。

「何て言われても仕方がないよ。1つ1つ自分の染み抜きをやるんだ。

(ちょっと思いつめて)…キミ…これからも染み抜き手伝ってくれるかい?」

(わお~、いきなり愛の告白かい?)

しばし沈黙が続いて…ごめんだわ。いやよ、あたし、そんなこと。不潔だわ。

「しかしボクは…」 (内心がっかりの三郎…)

 いやよ、あたし…あたし、帰るわ。

「ああ…」 これ米子さんから、とふろしき包みを差し出す朋子。

「何だろう?(覗き込んで箱を振ってみる三郎)お寿司かな?」

 虫下しの薬よ、きっと  「えっ?」

さよなら と朋子はバタンと扉を閉めた。 けど…再び開けて…

さよなら、弱虫さん と言い残して帰っていった。

(この笑顔がとてもキュートだった)

朋子は、三郎が嫌いなわけではないんだよ、

自信を持って強くなってほしいと願っているのだと思う。

頑張れ~サブちゃん音譜



勤務中に出会った花嫁さんの衣装の美しさに感動したり、

運転については浮田に教えてもらったり…と充実した日々を送っていた朋子が、

ついに運転士の試験に合格した。