*ガンのために、31歳で亡くなった一人の父親が残した遺書から抜粋したものです。




 ふたりの子どもたちへ



心の優しい、思いやりのある子に育ちますように。



悲しいことに、私はおまえたちが大きくなるまで待っていられない。



こんな小さなおまえたちを残していかねばならぬのかと思うと胸がくだけそうだ。



いいかい。心の優しい、思いやりのある子に育ちなさい。



そして、お母さんを大切にしてあげなさい。



父親がいなくても、胸を張って生きなさい。



私も右足切断の手術を受けたけれども、負けなかった。



だからおまえたちも、これからどんな困難に逢うかもしれないが、負けないで、耐え抜きなさい。



サン=テグジュぺリが書いている。



大切なものは、いつだって、目には見えない。



人はとかく、目に見えるものだけで判断しようとするけれど、



目に見えているものは、いずれ消えてなくなる。



私に逢いたくなる日がきたら、手を合わせなさい。



そして、心で私を見つめてごらん。



お母さんを守ってあげなさい。



思いやりのある子とは、まわりの人が悲しんでいれば共に悲しみ、



よろこんでいる人がいれば、その人のために一緒によろこべる人のことだ。



思いやりのある子は、まわりの人を幸せにする。



まわりの人を幸せにする人は、


まわりの人びとによって、もっともっと幸せにされる、世界で一番幸せな人だ。



だから心の優しい、思いやりのある子に育って欲しい。


それが私の祈りだ。



さようなら。



私はもう、いくらもおまえたちの傍にいてやれない。



おまえたちが倒れても、手を貸してやることもできない。



だから倒れても倒れても、自分の力で起き上がりなさい。



さようなら。



おまえたちがいつまでも、いつまでも幸せでありますように。





                     雪の降る夜に 父より