今もときどき
まぶたの裏にふっと浮かんでくる光景
ぎゅうぎゅうに詰め込まれた電車内
るいの後方に私は立っていた
けれどほんの少しの距離があって
その隙間に人の気配や雑音が入り込んでいた
そのときだった
るいが立つ横の座席に強面の
年配の男性がひとり座っていて
その隣の席には大きな荷物がふたつ
誰もその隣に座ろうとしない
いや座れない空気があった
でも、、るいは一歩前へ出た
右手をやわらかく差し出して(手のひらを上に向け)
あのまっすぐな声で
けれどどこか優しい響きで
「すみません!
この座席にあるお荷物ですが
そちらに移動は可能ですか?」
可能。。可能っていったのーーーー♡
その声には押しつける強さも
媚びる柔らかさもなかった
ただ真っすぐに人の間を
すっと通り抜けるような
清々しさがあった
男性は無言でるいを見ていた
その視線は重たくもあり
試すようでもあり
けれどやがて男性は何も言わずに
荷物を膝と足元に下ろした
「ありがとうございます」と
るいは笑顔で男性にいっていた
…次の瞬間だった
るいが座るんじゃなかった
自分ではなかったんだよね
「ここに座るといいよ」
そう言ってまだ幼い女の子。。
たぶん4歳か5歳くらいの。。
人混みの波に飲まれそうだった女の子を
静かに座らせたんだよね
私のところからは見えない背丈で
るいはしゃがんで目線を合わせて
言ったんだよーー
私はそのとき初めて気づいた
るいの視線の先にいたのがその子だったんだと
そしてるいは何ごともなかったように
また立ったまま車内の揺れに身をゆだねていた
笑顔も見せず誇らしげな様子もない
ただ静かに
私の胸の奥にふっと温かくて切ない風が吹いた
あれは誰にも気づかれなくてもいい優しさだった
誰かを咎めることもなく誰かを責めるでもなく
ただ今ここでできることを自然に差し出しただけ
それはまるでひとひらの光が
落ちてくるみたいな瞬間だった
るいはそういう人だったんだと
あの日私は静かに知ったのかもしれない
今も私はときどき思う
あの女の子は
るいのあの声を覚えているだろうかって
あの席の温もりを
ふいに思い出すことがあるだろうかって
横にいた保護者はるいにお礼を言っていたが
女の子に言い伝えるんだろうか
でもたとえ覚えていなくても
伝えていなくてもいい
るいがそこに差し出したのは
「思い出に残る優しさ」じゃなくて
「迷いのない優しさ」だったから
私はそれをちゃんと覚えている
この胸のずっと奥で静かに灯ってる
あのときるいがしたことは
ニュースにもならないし
誰かに大きく称賛されるようなことでも
なかったかもしれない
だけど人の本当のやさしさや美しさって
こういう静かな場面に宿るのだと
私はあの日胸の奥に深く刻まれたんだー
誰にも見えないところで灯る
小さな光
それが人をあたため続けることもあるんだってね
そう信じられるのはあの電車の中の記憶も
加わったから
そしてきっとこれからもあの一瞬のような
心の澄んだ大人に成長してくれることを願っています
寮に入って随分大人になった
本当に成長した
親がいない12歳で
ちょっと泣き虫なるいが
いろんな経験をして
痛みも分かる大人に
なろうとしている
あ
今日は母の日だけどさ
るいが小6の母の日
もうブログにも書いたかもだけど
日能研に行っててさ
いつもは駅まで私が迎えに行くのに
頑なに断られてさ
帰るなり
玄関でモジモジもじもじしていて
急に飛び出してきて
私に駆け寄り抱きついて
「一緒に暮らす最後の母の日だから
プレゼント買ってきた!
ママいつもありがとう」て
わんわん泣いてさ
まだ私より背がずいぶん低くて
私の胸に顔を押しつけ
泣いていたっけ
お小遣いを渡していなかったのに
どうしたのかと思えば
日能研に持っていく
お弁当代を少しずつ
貯めていたと
えびせんや甘エビ
エビのボイル
エビづくしの
あ
思い出したら
泣けてきた
今日ご来店のお客様に
渡すカーネーション🌸🌼✨
るいから電話あり
「荷物ありがとうございます🤩
1つ1つ整理しつつほどいていたら
こんな時間になった!」
うれしそうに
中2のGW前に盗まれた腕時計
当時の舎監からは
「いい腕時計⌚なら
誰もがほしいですよね!」
それ褒めてない
それ以降買うことをしなかった私
でもその荷物に
電波ソーラーの
腕時計を入れておいた
ながっ