こんにちは、絶學無憂です。

 

キネシオロジーの筋肉反射テストはどうして「反射」と言うんでしょうか?

 

英語では muscle testing ですから、反射 reflex という概念は入っていません。

 

以前の記事でも触れましたが、どうやらグッドハートのキネシオロジーが日本へ入ってきた時にそれを最初に書籍で紹介した伊東聖鎬氏が筋肉反射検査と名付けたことに由来するようです。詳しく彼の書いたものを読むと、「最初は筋肉検査をやっていたが、それでは筋肉の疲労が激しく実用に耐えないことが分かったので、筋肉反射検査を開発した」ということが書いてありますから、彼の意図としては、明らかにmusle testingの訳語である筋肉検査(筋肉テスト)と、筋肉反射検査(筋肉反射テスト)は別々の概念になっています。

 

後の人たちがその区別を氣にせずに一緒くたにしてすべて筋肉反射テスト・筋反射テストと呼ぶようになってしまったものと思われます。

 

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筋肉が疲労しない筋肉反射テストというのはどういうことかというと、力任せに押すのではないということです。少し長いですが、伊東聖鎬著「脳の情報を読む方法」に記載してある方法では以下のように書かれています。ここでは、友人が被検者(テスティー)で、あなたが検者(テスター)です。

 

19ページより

  1. 友人とあなたは向かい合って立つ。

  2. 友人は、肩幅程度に足を開く。あなたは片足を半歩前に出す。

  3. 友人は片腕を真横に水平に伸ばす。伸ばす腕はどちらでもよい。残った腕は楽に下に垂らす。

  4. 伸ばした腕の手の甲は上側になるようにする。その手は親指を外側に軽く握る。

  5. あなたは、友人の肩—腕—手の甲がほぼ水平であるかどうか確かめる。ことに腕全体が肩より高くならないようにすることが大切。

  6. あなたは友人の腕に、自分の利き腕の手指四本(人差し指、中指、薬指、小指)を軽く添えるようにのせる。

  7. そして、友人の腕に軽くふんわりと加圧し、友人は、この加圧に対して伸ばした腕をしっかり水平に保つようにする。友人ははね返そうという力を用いず、あくまでもまっすぐなまま腕の水平位を保つようにする。そのとき友人の腕が水平位のままのとき(これはあなたの加圧と均衡しているからです)、ブレることなくカチッと止まります。この状態を「ロックしている」と言い、またこの位置を「バランス点」と言います。ここでは反射は無い(ゼロ)状態です。

    • ここまでが検査の準備になります。この手順の中で大切なことは、友人に腕を「肩—腕—手の甲の水平位を保つ」という意識をしっかり持ってもらい、あなたが加えた圧に対してそれ以上の力で反発させないことです。
    • 他方、あなたは、四本指で加圧する時、強い力をかけるのではなく、自分の肩と肘の体勢をしっかり決め、友人の腕の僅かな緊張の変化を読み取るようにします。頬をやんわりとへこます程度の力で行うのです。
    • この際、あなたの耳を友人の腕に近づけるようにし、あたかも腕から情報を聞き出すかのようにすると、なおよいでしょう。
    • ところで、脳反射検査で利用する筋肉は、どの筋肉でもよいのです。ここでは、肩から腕についている「三角筋」を使っています。三角筋に力を入れた状態が、水平位なのです。
    • 検査に入っていく前に、「バランス点」を確認しますが、加圧しようとしたとき水平位を保てず、腕がブラブラしている場合があります。
    • このように「バランス点」がとれない場合には、体の向きを少し変えて同じこと(1〜7)を行ってください。「バランス点」が確認できるまで、友人の体を少しずつ方向を変えながら、その都度1〜7を行って下さい。カチッと腕がロックし、「バランス点」が確認できる方向があるはずです。
    • なぜ方向を変えると、「バランス点」が確認できない状態から確認できる状態に変化するのか。これには訳があるのですが、それは後に詳しく説明します。結論だけ言っておきますと、友人は最初の位置において、何らかの影響を受けていたのです。
    • では、友人の腕がロックし、水平位を保つことが確認できたら、次に進みます。
  8. 検者は「バランス点」まで加圧したまま手を離さずに、さらにもう少し圧を加えます。この加圧を「チェック」と言います。

  9. あなたは、8でチェックのために加圧した力だけを抜き、「バランス点」(7)に戻ります

8のチェックのための加圧も、ごく軽い力で行います。このときに何かの影響を受けていると、バランス点が無くなりロックしなくなるのです。つまり腕の筋肉に緊張が起こらなくなるのです。この腕のロック状態から、水平位を保持できなくなった状態に変化することを(+)反射と言っているのです。

簡単にまとめると、一旦軽く押してもカチッと止まったままでいられる位置(バランス点、均衡点)を見つけて、そこからさらに軽く押した(チェック)時に、そのままバランス点を維持できるかどうかを調べて、ロックしたままの状態を維持できたら(−)反射と呼び、バランス点を維持できずに動く場合を(+)反射と呼んでいます。

伊東聖鎬氏の言葉によれば「腕の筋肉を緊張させる脳の反射がずれることでタイミングがずれてしまうのです。

 

お分かりでしょうか?ここに書いてある方法は、単に押す力に対して対抗できるかどうか、対抗するだけの力があるかという強弱を調べているのではないのです。

 

普通に筋肉反射テストを始めると最初はこの力比べになりがちですが、これですと当たり前ですが筋肉が疲れます。キネシオロジーに関する英語の本を読んでいても、test strong 、test weakという表現がよく出てきますから、強い・弱いを問題にしているのが普通のようです。

 

しかし、伊東聖鎬氏はどうやら、強い・弱いではなく、「一旦等尺性(isometric)の均衡状態を作った筋肉が、そこからさらに僅かな負荷を受けた時に、それに反応して新たな均衡状態を作れるかどうか」を見ればよい、ということに気づいたのですね。何らかの影響を受けているために、たとえごく僅かな力であっても、均衡状態を破られたときに、対応できずにズルズルと関節が動いてしまうという現象を彼は(+)反射と呼んだのですね。特に彼は「脳の反射」であると考えているようです。現在彼が教えている読脳法もこの延長上にあるのだと思います。

 

私自身もかなり長い間、と言ってもキネシオロジー歴は1年ちょっとくらいですが、筋肉反射テストというのは、筋肉の強い・弱いを見ているのだとばっかり思っていました。(経絡異常などの影響で)スイッチの切れた状態の筋肉は実際に筋力が一時的に弱っているのだろうという理解をしていたわけです。例えば、

  • 「私は今ここにいる」という命題は絶対的な真理と言ってよいはずですから、これを唱えると筋力が強くなる。
  • 「私は今ここにいない」という命題はこれ以上なくらい間違っていますから、これを唱えると筋力が弱くなる。

というように理解していました。そして実際に、「私は今ここにいる」ですと筋肉反射テストでは筋肉は「強い」、「私は今ここにいない」だと「弱い」と言う結果を得ることが出来て、それでずっと満足していました。

 

しかし、数日前に面白いことに気が付きました。

 

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  1. 左肘を屈曲したままで、「私は今ここにいる」と念じて、右手で左手をぐっと力いっぱい押し下げて、左の上腕二頭筋(力こぶ)の力を試します。この状態では左の上腕二頭筋は通常悠々と持ちこたえることができます。
  2. 1で力をいっぱいに入れて均衡状態にある真っ最中に、「私は今ここにいない」と念じます。
  3. 「私は今ここにいない」という嘘を念じることで単純に筋力が低下するのであれば、均衡状態が破れて、左肘が伸びてしまうと予測しましたが、そうはなりません。そのまま、持ちこたえることができます。
  4. さらに、1で力をいっぱいに入れて均衡状態にある真っ最中に、力の入っている左の上腕二頭筋の腹の辺りを右手の指でチョンチョンとつまんで筋肉が短くなるような方向に寄せます(筋紡錘チャレンジとか筋紡錘のテクニックと呼ばれる技術です)、あるいはそのようにイメージをします。
  5. 通常、筋紡錘のテクニックで筋腹をつまんで寄せて筋肉を短くなるようにする、あるいはそのようにイメージをするだけで、その筋肉のスイッチを一時的にオフにすることができることがよく知られており、これが(エネルギーの流れ方の異常である)スイッチング現象の有無の検査として、キネシオロジーでは筋肉反射テストの事前テストに用いられます均衡状態にあるときに、筋紡錘の刺激によって左の上腕二頭筋のスイッチをオフにするようなことをすれば、当然均衡が破れて、左肘が伸びてしまうと予測されますが、そうはなりません。そのまま、持ちこたえることができます。

結局、嘘を念じたり、筋紡錘のテクニックによって筋肉のスイッチを切るようなことをしても、力を入れっぱなしの状態では効果が表れないようです。でもその後で、一旦押している右手の力を緩めてから、もう一度負荷を加えると、今度は左肘が負荷に屈して伸びてしまいます。

 

ということは、結局どうも筋肉のスイッチが切れているというのは、筋肉の強弱そのものではなく(もしくはそれに加えて)、やはり伊東聖鎬氏の観察の通り、新たに負荷がかかった時に、等尺性 (istometric)収縮でそれに持ちこたえるという反応が、特異的に阻害されているのではないでしょうか。持続している負荷への維持はできてしまうようです。

 

例えば、腕相撲をしている最中に、相手の筋肉に対して、筋紡錘のテクニックを使ってスイッチをオフにしてしまえば(これはどうもイメージだけでも使えてしまうので)ズル勝ちできるだろう、と思ってそういうチャンスを楽しみにしていましたが、この結果から考えると、一旦始まってしまったら力が入ったままになるので、そういうインチキには使えませんね。

 

レディー・ゴーの直前に使えば効果は期待できますが、そうなると一発勝負です。もし効いてなかったら、もう後は実力で戦うしか無いということになります。

 

さてこの反応を「反射」と名付けてしまったわけですが、生理学の世界では反射というのは

人間動物が刺激に対して,意識作用の関与なしに神経系を介して行う反応。条件反射と無条件反射とがあるが,普通は後者をさす

などと定義されています(スーパー大辞林)。私はこの現象を反射と呼んでよいのかなと思っていましたが、「意識作用の関与なしに神経系を介して行う反応」という定義であればぴったりハマるように思いました。ものの見事に意識作用の関与がありません。

本当は筋肉生理学のほうで見つかっていて良いような現象ですが、私の知る限り生理学の教科書には筋肉反射テストで使う「反射」は出てきませんね。

 

マンガを描けばずっとわかりやすくなるんでしょうが、ちょっとめんどくさいのでできません。そういうのが好きな人がいたらむしろ描いて送って下さい(人任せ)。

 

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