こんにちは、絶學無憂です。

 

私は現役の神経科学者でありながら、持病の末期歯周病を治す道を求めて数年前に代替医療の世界の戸を叩きました。その経緯もいずれ文章にしたいと思いますが、如何せんまだ出口が見えていないのでまとまりません。これでもかこれでもかといろいろ試すうちに、キネシオロジーに辿り着き、一人で行う筋肉反射テスト muscle testingを独習しました。

 

キネシオロジーの世界は、それまで知っていた代替医療の世界(ホメオパシーや靈氣)と比べても、驚きが多く、その思いがこのブログ立ち上げに至ったのですが、最近、伊東聖鎬(いとうせいこう)先生という方の存在を知りました。実は少し前にこの先生の本を買って試していたのですが、この先生がYouTubeに「読脳チャンネル」というチャンネルを作って臨床場面やレクチャーの動画を1000点も公開しているというのはつい最近まで知りませんでした。

 

その1000点の中でも選りすぐりの「チャンピオンデータ」なのかもしれませんが、パーキンソン病に悩む女性に対する伊東聖鎬先生の臨床風景(治療と呼ぶべきかどうか定かではありませんので)のビデオは衝撃的でした。

 

 

 

この女性は長らく処方された薬を服用していて、近年は副作用がひどくなってきたので薬を控えているということでした。薬の名前は分かりませんが、パーキンソン病特有の安静時振戦がはっきりと出ています。

 

この動画では素人の男性数人が言われた通りに女性の体の各部に手のひらを触れるだけで、まるで脳深部刺激法(DBS)の刺激電極のスイッチを入れたかのように安静時振戦が止まり、手を離すとDBSのスイッチを切ったかのように振戦が再開しています。

 

これらの触れる場所は「読脳」と呼ばれるキネシオロジーの一種(どうやら伊東先生は一緒にしてほしくないようですが、ルーツはキネシオロジーにあるようですし、かなり類似点があります)によって同定されたものです。

 

動画の間ずっと伊東先生は右手の指を小刻みに動かしていますが、あれが読脳法で、(伊東先生の説明によれば)女性の脳の情報にアクセスして、(伊東先生が頭の中で繰り出す)無数の質問に対するYES, NOの反応を指先の微弱な反応で得ているのです。この動画では、読脳によりこの女性のパーキンソン病の原因部位を同定し、そこへ対して「タッチ検査」を行っていることになります。

人には原因(関連)部位にタッチすると、一時的に症状が変化するというシステムがあります。このシステムを利用して原因部位を特定、確認する検査法をタッチ検査といいます。

http://www.cw-system.jp/Axis_of_GravityBalance

 

このタッチ検査というのは応用キネシオロジーでTL (therapy localization)、タッチ・フォー・ヘルスでCL (circuit locating)と呼ばれている原理に類似しています。こちらはある症状に対して筋肉反射テストの指示筋が弱くなるとき、治療効果のある点に同時に触れると、その筋肉が強くなるという原理です。ですからキネシオロジーの世界から見ればそれほど奇異ではないということです。

 

その30分後女性は、手を触れられていた時のイメージを思い出すことで、症状の軽減を実現して、小走りまで見せ、最後には車椅子に乗らずに意気揚々と歩いて帰っています。

 


比較のために脳深部刺激法(DBS)による安静時振戦の抑制の様子を御覧ください。このような動画は近年は医学部の講義などでもよく紹介され(私の教えていた某有名大学でも使っていました)、その劇的な効果ゆえにとてもインパクトのある教材として医学生の興味を大いに駆り立てるものです。

 

 

 

しかし、これとほぼ同じことが脳内に電極を埋め込むでもなく、ただ手のひらを体に当てるだけで実現できるというとき、どちらがより「インパクト」があるでしょうか?

 

動画にも断りがあるように、この女性の場合、(おそらくは時間の都合で)実際には本来症状を解消するために必要な調整作業(然るべき骨を然るべき角度に力を加えて回転させること)を行っていません。手のひらを当てていたタッチ検査は、いわばこの調整作業の「プレビュー」あるいは結果の事前予想として、実際にそれらの骨に処置をした場合に得られる効果を先取りしていたに過ぎません。なので手を離すとすぐに症状が戻ってしまったのですが、女性自身の工夫なのか伊東先生の工夫なのか、この女性はこの手を触れられている状態のイメージを頭の中で再現することで30分後にも効果を再現できていたようです。

 

理想的には、読脳法や、骨を動かす調整法を、ご自身あるいは関係者の方が学んで、毎日繰り返し調整することが一番有効だと伊東先生は述べていますが、この後この女性はどうなったのか、現在いかがお過ごしなのか、大いに気になるところです。

 

ところで、神経生理学ではパーキンソン病の運動障害を脳内のニューロン活動異常から理解しようとしてさまざまな研究をしていますが、このようなビデオの存在を知ってしまったとき、生理学者は一体どうすればいいのでしょうか。

 

実のところ、脳深部刺激法(DBS)の作用機序すらいまだに論争が続いていて西洋医学では理解できていない英語Wikipedia)のです。これは主に視床下核という脳の深いところに刺激電極を入れて、繰り返し電気刺激を行いますが、これによってニューロンを興奮させているのか、過剰興奮によってかえって抑制させているのか(depolarization block)、抑制性の通過線維を刺激することでシナプス抑制を生じているのか、通過線維から逆向きに遠い処のニューロンを刺激(興奮)させているのが効いているのか、それともニューロン活動を非同期化させることが効いているのか、いろいろな意見があり、それぞれに証拠があります。これは一般の方からすれば驚きだと思いますが、事実ですよ。西洋医学、と言っても作用機序のよく分からない方法を平気で使用しているのです。

 

そんなところで、手のひらで体に触れたら振戦が止まるよと言われると、正直なところ何をすればいいのか困惑を覚えます。

 

実験的に調べるのは非常に困難ですが、脳深部刺激法(DBS)の電極が埋め込んである患者さんに手術室で読脳法を使ってこの動画と似たような効果の処置を施した(どのような処置をすればよいかは患者さんによって恐らく千差万別)と仮定すると、恐らく症状が消えている間はDBS電極で記録される大脳基底核(視床下核)の神経活動も一時的に正常化するのでしょう。

 

でもそれは「どうすれば治るのか」ということには全く答えていません。「症状が治った時には脳の活動も治っている」(両者は相関している)ということが分かるかもしれないというだけです。どうすれば治るのか?手で触れればよく、また恐らく骨を回せばよいのです。結果を見れば明らかでしょう。

 

それがどうしてドーパミンが欠落した脳の神経活動を正常化させることができるのか?どうしてなのでしょう。私にはうまく説明することができません。

 

 

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