産経新聞の実質的な夕刊紙(大阪ではまだ産経自体の夕刊があるので実質別冊であるが、全国紙としての東京発行の夕刊が2002年3月に終了しているためその代わりとなっている)の夕刊フジで、セ・パ交流戦の導入後も真っ向からそれを批判していたのが江尻良文氏(2021年9月死没・享年72)というスポーツライターだ。

 

元々はプロレス中心の夕刊スポーツ紙・東京スポーツ(大阪・西日本では大阪スポーツ)の記者を経て産経新聞に移り、サンケイスポーツ・夕刊フジの専属記者としてプロ野球を追いかけていた。

 

今年で20年目(19回目)となるセ・パ交流戦だが、江尻氏はこれを真っ向から批判する記事を紙面に載せ続けていた。

 

実際、セ・パ交流戦はコロナによる2020年の中断前は圧倒的にパ・リーグ優勢の状態であり、2017年の同時期に掲載された記事によれば、「昨年(2016年)の交流戦でセ・リーグ球団で唯一勝ち越し、11勝6敗で12球団中3位に入った広島が、25年ぶりのリーグ優勝を果たした。『セ・リーグのペナントレースを制するポイントは交流戦クリア』といわれているほどだが、まさに本末転倒。交流戦をいかに無難に乗り切るかがリーグ優勝を決めるポイントでは、セ・リーグのファンは納得できないだろう。さらに交流戦の“パ高セ低”ぶりは、球界最大のイベントである日本シリーズにまで影を落としている。交流戦が始まった2005年から昨年までの日本シリーズで、セ球団が日本一になったのは原巨人2度と落合中日1度の通算3度だけ。対してパ球団は3倍の9度。しかも、もっかパ球団の4連勝中。勝負の世界は一度見下ろされたら負け。交流戦でやられっぱなしのセ球団は、日本シリーズでも開幕前から既に圧倒されているのだ。(中略)人気がなかったパ・リーグ救済のために翌05年から交流戦が始まった経緯がある。『もうパ球団も自立できるようになったのだから、交流戦の役割は終わった』というセ側の本音にも一理ある」と、あくまでも「人気のセ・実力のパ」、有望な選手がいても、客入りが鈍り続けているパ・リーグを救済するという目的のために交流戦を始めたのだから、交流戦はやめて2004年までの同一リーグ間の対戦に集中すべきという意見を度重ねて記述し続けていた。

 

現在の倍・2005年の36試合(ホーム・アンド・アウェー方式6回制)のそれもパの105勝に対してセは104勝と1勝差でくらいついていたが、試合数が削減され、H&A4回制によって行われた大会では、2010・11・13年と20勝前後、現行HorA3回制となった2015年以後でも、2015年から順に17・13・5・11と、2017年を除けば10勝以上の差を広げられて、もはや「実力のパ」にお株を奪われたという印象があって、巨人軍番を務め続けた江尻氏が交流戦廃止論者であったことは確かだったのかもしれない。

 

しかし、2020年の中断を経て、2021年以後の交流戦では、むしろセ・パ拮抗しているという印象がある。リーグ対抗戦という点では、現在各チーム3回総当たり(どちらかのホームで3連戦、1チーム18試合)の現在のルールでは、2021年は1勝、2022年は2勝の差という僅差でセ・リーグが勝ち越し、昨・2023年もパ・リーグに勝ち越されるもわずかに2勝差だった。

 

日本シリーズもこの19年間で、セ・リーグのチームの優勝は昨年の阪神を入れてわずか5回、特に2013年から2020年までは8年連続してパ・リーグが優勝しており、福岡ソフトバンクはこの2011-2020年までに2連覇(2014・15年)と4連覇(2017-20年。うち2019年はリーグ戦こそ埼玉西武に優勝を譲るもクライマックスシリーズで逆転し、そこからの4連勝スィープを決めている)を含む6回の日本一になるなど、パ・リーグの独壇場だったが、2021年以後ではセ・リーグ(2021年東京ヤクルト、2023年阪神)も日本一で追い上げを見せており、江尻氏のいう「パ高セ低」の概念は徐々にではあるが崩れつつある。

 

惜しくも嘱託編集員となった2021年に江尻氏は亡くなられたが、今のセの躍進を見て、交流戦の考え方を変えるきっかけになるのだろう。

 

むしろ多くの野球ファンは、セ・パ交流戦は必要不可欠だという意見も圧倒的になってきた。実際、約3週間同一リーグからの対戦を離れ、交流戦は互いのリーグと3回総当たり・18試合を戦うが、これによってそれまでは圧倒的な優位に立っていたチームがそれをきっかけに接戦に巻き込まれ、リーグ優勝争い、さらにはクライマックスシリーズ争いを混とんとさせているというのは紛れもなく事実で、交流戦の試合数をむしろ増やして人気獲得に更なる弾みをつけさせるべきという件もあると思う。

 

僕としては、長年4回総当たり24試合の方式に戻すべきという意見もずっと温めているが、リーグ戦の日程面確保という点を考えたとき、変則H&A方式での27試合制を導入するのも手として考えたほうがいいのではないか。ようは、基本の18試合(HorA)に、2年前のAクラス・Bクラス同士によりさらに3回・合わせて6回総当たりのH&A方式9試合(ホームは最初の3回総当たりとは入れ替える)として、27試合。また雨天中止の予備日も現行の4日間で消化しきれないケースも考えられ、状況によってダブルヘッダーをせざるを得ないケースも出てくることを考えて、その分リーグ戦の試合数は120試合(24回総当たり)に減らし、それプラス交流戦27試合(基本3回+プラス1対象チームと3回総当たり)の147試合となるが、1週間程度の予備日を設けてもいいだろう。

 

大体5月の第3週ぐらいから27試合なので、最初の3回総当たり18試合を6月の第1週目まで行って、6月第2週目の前半4日間で1巡目の日程の消化しきれなかった分の予備日に充当する。6月第2週の後半から3週目をかけて「交流戦プラス1」としての3連戦9試合を行い、それでも雨天中止などで消化しきれなかった場合、一旦リーグ戦に戻ったのち、7月のオールスター前後の1週間(オールスター前がいいか)を交流戦全体の予備日として充当し、それで27試合を消化させる。特に6月は梅雨の時期で試合消化が進まないことも災いするため、交流戦全体の他、4-5月に行うべきだったリーグ戦の共通予備日にも充当させることも考えるべきだろう。「交流戦プラス1」を導入すれば、セ・パともより引き締まったリーグ戦展開が期待できるだろうと思う。