武蔵野線は、国鉄スト権ストの合理化策の問題の対象にもなったが1973年に開業された、千葉・埼玉・東京多摩を結ぶ延べ100㎞に及ぶハブ路線である。サッカー解説者の中澤氏が、現役時代に当時のヴェルディ川崎の練習場・稲城市のグラウンドへ向かうために、武蔵野線の沿線の一つ・吉川駅から片道1800円の負担で常に利用していたといういわくがある鉄道路線である。

 

武蔵野線は千葉県西船橋を起点として、千葉・埼玉・東京の実に25の駅・100㎞を結んでいる。1990年からは京葉線が東京駅~蘇我駅まで全通したことによって、列車によるが、西船橋を経由して東京駅・海浜幕張駅への直通列車も増えた。現在の西端は東京競馬場に近い、府中本町駅であり、この府中本町から川崎駅を直結する運転構想がいまだに残っている。

 

この府中本町~鶴見間は、川崎市が構想していた小田急新百合ヶ丘駅~川崎駅を結ぶ地下鉄の建設計画の予定されていた路線と重複し、一部を京浜急行と直通運転することで、東京と川崎・横浜への行き来をしやすくするというものだったが、川崎市の財政負担が大きいという理由で白紙撤回になった。また、武蔵野線も約30㎞の貨物専用線というのがあるが、これを旅客用に転用する動きも今のところみられていない。

 

現在、府中本町駅から川崎方面には、南武線というのが並走しているが、これは乗り換えが必要であるため、一度乗り継ぎが必要になり、府中本町駅はその武蔵野線と南武線を挟むように貨物線が走るという構造になっているため、これが直通運転を阻害している。また武蔵野線は現在快速電車を原則的に運行していないことや、福知山線脱線事故以後のダイヤの過密化という懸念もあり、千葉~川崎を結ぶ大動脈でありながら、ハブ路線でありながら、長年の直通運転の実現を阻害しているという印象だ。まぁ、府中本町駅の構造の改修さえ実現すれば、貨物線を転用して武蔵野線~南武線を乗り継ぎなしの直通運転で運行できるチャンスはあるのだろうし、川崎市営地下鉄の代替となる市民の大動脈としての期待も高まる。

 

そしてこの南武線・武蔵野線の直通運転化工事を行うに際して、鶴見線と南武線の支線・浜川崎線との直通運転の活用も進めるべきだ。

 

鶴見線はJR東海道本線(京浜東北線・上野東京ライン)とも乗り継げる鶴見駅~南武線の支線である浜川崎線・浜川崎駅を経て、工場地帯が連なる扇町駅までの本線と、浅野駅で分離して事実上東芝の関連会社の業務用路線である海芝浦線、本来は武蔵白石駅で分離するのだがホーム有効長の関係で安善駅で分離して大川駅と向かう大川線と2つの支線があるが、これも区間運転のみであり、他の路線へは乗り換えが必要になっている。

 

これを乗り換えなしで一本で行けるようにするための工夫として、尻手(しって)駅を介して乗り換えとなっている浜川崎方面も複線化、老朽化した浜川崎駅も再開発をすることで一体整備し、鶴見駅まで延伸させ、一部電車は京浜東北線・上野東京ライン経由で東京方面へ乗り入れる。

 

これらの実現で、東京都心と郊外の鉄道の行き来の利便性をより一層高めるきっかけを作れるチャンスを広げることができるはずだ。