中央競馬のクラシック競走においては、毎回2-3の当該GⅠ競走出走権をかけたトライアル競走というのがある。そもそも30年前までは、トライアルと称された競走は1つだけで、それ以外の優先出走権がかかった競走は「指定オープン」という位置づけであり、トライアルよりも優先出走権を獲得できる馬は確か3-4頭で、それよりも格の高い重賞であるトライアルは5頭ほどが優先出走できていた。1995年に指定オープンもトライアルとほぼ同じという理由で、オープン特別(リステッド)相当は2頭、他は3頭に優先出走権を与えている。

 

ところが近年はトライアルや前哨戦を使わずに、有力馬は年末の2歳の重賞をたたいた後は本番まで休養に充てる傾向が増えている。実際、コロナでリモート開催が続いた2020年の三冠馬・コントレイルは2019年、ホープフルステークスに勝利してから、皐月賞まで休養を取り、前哨戦・トライアルには一切出ず、ぶっつけ本番で三冠を達成しているなど、トライアル経験馬よりも年始初戦に充てていた馬が好走し、勝利を収める傾向が増えてきている

 

2014年に2歳の明け3歳クラシック路線の拡充を図る観点から、朝日杯フューチュリティーステークスを中山から阪神に移し、NHKマイルカップを念頭に置いた短距離路線のGⅠと位置付けられ、年末最終日のホープフルステークスがクラシックに最も近い競争と位置付けられるようになった。それゆえ、賞金条件が高いホープフルや桜花賞路線につながる阪神ジュベナイルフィリーズをたたいて、そこで賞金を稼いで春に余裕を持たせようという馬が結構増えているという。

 

競馬評論家の有吉氏(元朝日新聞)もトライアル競走の意義に疑念を持ち始めているというが、僕としても、こういう現状を考えると、トライアル制度の見直しを図るべきと思う。具体的には現在2頭(スィートピーステークス、プリンシパルステークスは1頭)のみに与えている春のクラシックにつながるリステッド競争のトライアル戦と、トライアルには認定されていない前哨戦と位置づけられた重賞の配置・位置づけを入れ替えるという考えである。

 

現在のトライアル競走は

・桜花賞-チューリップ賞(GⅡ)、フィリーズレビュー(GⅡ)は3着まで、アネモネステークス(リステッド)は2着まで

・皐月賞-弥生賞ディープインパクト記念(GⅡ)、スプリングステークス(GⅡ)は3着まで、若葉ステークス(リステッド)は2着まで

・オークス-フローラステークス(GⅡ)は2着まで、スイートピーステークス(リステッド)は1着のみ

・ダービー-青葉賞(GⅡ)は2着まで、プリンシパルステークス(リステッド)は1着のみ

となっており、このほか、トライアルではないため、賞金加算のための権利取りの位置づけの重賞として、桜花賞へ直結するものとしてフラワーカップ(GⅢ)、皐月賞へは毎日杯(GⅢ)、ダービーへは京都新聞杯(GⅡ)がそれぞれ該当する。

 

桜花賞と皐月賞はそれぞれ関東と関西でトライアルが行われているが、オークスとダービーはそれぞれ桜花賞・皐月賞の上位4着までの馬に優先権がある関係で、関西でのトライアル戦がない。関西馬が不利になるという条件から考えてみても、関西を舞台にしたトライアル競走があってもしかるべきと思う。

 

そこで、具体論として、トライアル競走はすべてGⅢ以上の重賞とし、

・アネモネステークス→フラワーカップ

・若葉ステークス→毎日杯

・プリンシパルステークス→京都新聞杯

にそれぞれトライアル競走を委譲し、これらの春のトライアル競走の上位入着馬の優先出走権は一律2着までと少しハードルを上げてみる。

 

オークスもう一つのトライアルであるスィートピーステークスは現状これに相当する重賞・リステッドがない京都競馬場に移設して重賞競走の格付けとするが、基本的に同距離、同条件に相当、またはそれに準じる競走でない場合は当初最低2年間はレーティングの関係で「(新設)重賞」として国際格付けなし、いわゆる過去のJpn格付けと同じ扱いとされるので、当面は「(新設)重賞」扱いで京都競馬場の同等距離で行い、将来の重賞格付けを目指す。

 

現在のリステッドに当たるアネモネS、若葉S、プリンシパルSは、トライアル競走という位置づけから外す代わり、リステッドのままでGⅢ級の賞金を与えたステップ競走と位置付けて、賞金条件が厳しい馬の復活戦的な色合いの強い競走とする。またスィートピーステークスを京都に移設して重賞格付けに変更した後のオークスの関東でのステップレースも上記と同じ形式のリステッド競走を割り当てる。

 

秋季についてはオークス・ダービーから秋華賞・菊花賞の間隔が約4か月もあるので、トライアル競走としては従来通りのスタンスを維持する。

 

トライアルからの優先出走枠のハードルが厳しくなるのは仕方がないとしても、近年の傾向を総合的に踏まえた際、レースの質の向上と世界につながる馬づくりをするという点を考えれば、遠征馬のトライアルからの出走権獲得枠を拡大するなども含め、これぐらいの手直しを図る必要を考えないといけない。