J3・いわてグルージャ盛岡のスタジアム建設問題が長引き、最悪の場合Jリーグライセンスの没収、即ちJFL降格の可能性も見え始めている。

 

グルージャは昨年結成20年と歴史は決して古くないが、2014年に発足したJ3では唯一、JFL(実質4部)を経験せずに飛び級の形でJ3への参加を果たしたが、本拠地のいわぎんスタジアム(盛岡南公園球技場)にはナイター設備がないうえ、収容人員約4900人のうち、座席はメインスタンドの正味2000人という小規模のグラウンド。通常なら練習場の用途にしか使えないが、J3では芝生席が観覧に影響しなければ観客席とみなすルールがあるため、それを使い続けてきた。

 

2022年に一度J2に昇格したのだが、これは昇格から5年以内にスタジアムを上位ライセンス基準に充足させるための大規模改修・または新築を目的とする「特例ルール」の適用によるものであり、その起点は2022年度の開幕時。そしてその5年以内のルールでも、3年目の6月のライセンス申請時までには具体的なスタジアムの建設場所を示さないといけなかったが、具体的な建設先がまとまっていないことや、新型コロナによる入場制限などもあったことを受けて、建設場所の具体策は来年・2025年6月まで延長されることが認められた。

 

グルージャの社長はかつて鹿島アントラーズ創設時の黄金時代を築いた秋田豊氏であるが、秋田氏は「Jリーグで最も最悪・最下位のスタジアムだと認識している。老朽化以前の問題」と酷評している。理由は、

・メインスタンドの屋根のかかっている箇所は基本放送・記者用に優先している

・メインスタンドは長椅子であり、年間指定席と称する箇所は養生テープで区切りをつけている

・電光掲示板(LED)が設けられていない

ことから、球技専用スタジアムとはいえ、Jリーグの開催スペックに合わせるにはあまりにもひどすぎるというのが現状であるとされる。

 

過去に岩手県では同じ盛岡市の県運動公園・純情産地いわてトラフィールで1993年、当時のヴェルディ川崎と清水エスパルスがJリーグ(当時1部)の公式戦、カップ戦も1999年の当時のナビスコ杯でヴェルディと名古屋グランパス戦に使用していたが、それ以後は使用していない。理由としてはピッチとの距離の問題やナイター設備の未充足(現状400ルクス)である点から、常時使用することが難しいこと、またいわてトラフィールにおいてもスタンドの老朽化が著しいことなどを挙げている。

 

J2以上に昇格する場合、特例による3-5年ルール(既存施設の充足化を求めつつJリーグの上位ライセンスを特認するもの)があるとはいえ、5年ルールは上位リーグに昇格して初めて効力を発揮するという点から考えると「まだ慌てる必要はない」という見方をしているのがあるのかもしれない。

 

現に、今回の特例が認められてJ2ライセンスを維持しているSC相模原の場合も、相模原駅前に建設が予定される新しい球技場の建設に大きな進捗がなく、本来は2023年6月に具体的な施策がまとまらなかったらJ3ライセンス降格というところだったが、コロナの影響を加味し、2025年6月まで猶予されたというありさま。同じようにJ1ライセンスを取得している水戸ホーリーホックもケーズデンキスタジアムのJ1基準の増築を予定したが、クラブが水戸市など周辺市町村のどこかで専用サッカー場を建設する方針に舵を切ったが、今のところ2028年頃の完成を目指し、建設場所の策定という段階に戻っているが、具体策がまだ見えていない。

 

その他、鹿児島ユナイテッドやブラウブリッツ秋田も新スタジアムの建設計画が予定されながら、具体的な場所や整備計画に遅れが出ており、既存の白波スタジアムやソユースタジアムの改築ではライセンスの意味がないという理由で一時はライセンスの募集も懸念されていたが、とりあえず上位ライセンスは認められた。

 

僕は、具体的な建設計画を示して、上位ライセンス発給から3年のうちに、または上位リーグ昇格から5年のうちにそれぞれ新スタジアムを建設する、または既存スタジアムの充足化を図るというややこしい特例ルールは見直すべきで、「上位リーグ昇格から5年以内に上位リーグライセンス基準を満たすことを確約すれば、既存の本拠地の充足工事でも本拠地として使用を認める」というやり方に統一したほうがいいと考えている。

 

グルージャの問題点の一つ・いわスタのJ1基準化は現状は難しいと思えるし、現にメインスタンドは対面型で2つのグラウンドを行き来できるようにする「ツインフィールド」方式(よく似た設計は宮城県利府のめぐみ野サッカー場も該当する)になっているため、メインで使用しナイター設備があるAグラウンドだけを改修することはなかなか難しいと思われる。

 

グルージャのホームタウンは盛岡市を含む岩手県全県と指定されているため、必ずしも盛岡市にスタジアムを建設しなければいけないというルールはなく、理論上はラグビー・リーグワン2部の釜石シーウェーブスが使用する鵜住居(うのすまい)スタジアムや、北上のウェスタンデジタルスタジアム(北上陸上競技場)の改修・改築でも問題はないのだが、なかなかそれが実現しそうにない。今あげた2つはナイターの常設がないのと、釜石のそれは電光掲示板も2019ワールドカップの時の仮設程度に留まっており、普段は磁器反転の小型得点板を使う程度しかない。

 

しかし、やはり盛岡市民が常時試合観戦しやすい環境を整えるという点を考えると、やはり盛岡市内でJ1開催基準を満たすことができるいわてトラフィールを活用したほうが一番無難ではないか。いわスタの大規模改修で使用できない時期を見越したうえで、一時的な暫定本拠地としての活用でもよいだろう。もちろん最低限、バリアフリーやホスピタリティーの拡充、照明設備のLEDによる1500ルクスへの充足とスタンドの耐震補強、電光掲示板の設置は必要だが、バックスタンドの芝生席を除外したとしてもJ1基準を満たすことができると思える。所有者である岩手県や、管理・運営者の件スポーツ事業団ともよく話し合いを計り、いわてトラフィールの活用をご検討いただきたい。