現在、日本のアイスホッケーリーグは「アジアリーグ」として、日本の4チームと韓国の1チームの5チームが参加している。現行のアジアリーグの発足は、日本リーグの参加チーム数が激減し、日本のチームだけで国内リーグを行える余力がないことから、アジアの強豪チームを迎え入れて、カナダ・アメリカにまたぐNHLに次ぐ国際的なアイスホッケーリーグを作ることを目指したことに由来し、実際、ロシア、中国を含め一時は9チームまで膨れたが、その後のコロナやロシアのウクライナ侵攻などによる撤退・除名などもあり、今年度は当初6チームの参加を見越していた。

 

しかし、釧路を本拠地としていたひがし北海道クレインズ(基は日本製紙)が、運営費の工面が困難となったとして実質的に除名となり、彼らの代わりとして結成した北海道ワイルズの参加が認められなかったことから、今年は日韓の5チームというアジアリーグ初期のチーム編成と同じ形になった。

 

ところがここにきて、ワイルズを中心に東京・名古屋に拠点を置くチームと中国の北京を本拠とするチームを含め4チーム程度で新たな日本リーグ構想を検討していることが分かった。開催時期は春~夏制でアジアリーグとの重複を避ける狙いがあるとみられている。

 

こうなると、バスケットボールの2つのリーグの分裂と同じように、アイスホッケーにおいても2つのリーグが分裂し、選手の引き抜きや国際アイスホッケー連盟からの制裁・除名などの懸念が起こりうる可能性がある。日本代表にとっても、五輪出場は念願であるが、1980年のレイクプラシッド大会を最後に1998年の長野の開催国枠での出場を挟む形で、実に40年以上も自力出場から遠ざかっている。2026年のミラノ・コルチナダンペッツォ五輪の予選は来年行われる予定だが、2リーグ分裂となると事態収拾のために1リーグにまとめる必要があり、最悪予選や世界選手権から除外される可能性も否定できない。

 

僕は以前から日本代表強化のために、日本リーグのチーム数を増やし、Jリーグ方式の地域密着型運営と、リーグライセンスの発行、地域リーグを含めた一体型の強化を図るべきと考えているが、2つのリーグができることによって(開催時期がアジアリーグが秋~春制、新リーグが春~夏制と時期をずらしてはいるとはいえ)大規模な混乱や選手強化に影響を及ぼすことになると、日本のアイスホッケーが世界からどんどん離れていくことにもつながりかねないため、見直しを図るべきと考える。

 

具体的には現在のアジアリーグに所属する4チームは無条件で1部リーグに参加し、新リーグを含む新規参加希望チームについては改めて日本アイスホッケー連盟が新リーグプロジェクトチームを設けて、そこで希望チームを募集し、1部・2部それぞれ8チームづつ程度の16チームを全国リーグとして行い、さらに参加希望チームが増えた場合、1・2部とも最大16-18チーム程度(合計32-36チーム)まで弾力的に増やしていく。

 

さらに1部・2部に参加する場合、ホームリンクの設置(1部で3000人程度、2部は1500人程度収容)、ホームタウンでの普及活動の実施、育成チーム(U-18、U-15など)の編成、当面は企業チーム登録も認め、将来は企業から運営会社(形態は株式会社、公益法人、NPO、労協問わず)を設立し円滑な完全プロ化を進めていくことなどを求め、それらに応じて1部ライセンス、2部ライセンスを発給する。1部リーグへの参加は1部リーグライセンスを保有するクラブに限定する。

 

また当面はチーム数を増やす観点から、将来の2部リーグ以上への参加を希望するチームのために地域リーグ所属クラブを対象とした「準加盟ライセンス」を設け、地域リーグの全国プレーオフで準加盟チームがベスト4以上の成績を挙げれば2部リーグへの昇格を認めるようにし、その分1部リーグへの自動昇格チームも認めるようにする。

 

最初のシーズンは1・2部とも8チームづつによるホームアンドアウェーで6回総当たり(互いのホームリンクで3試合づつ)とし、年間42試合終了時点での成績上位4チームが優勝決定プレーオフ、2部の新規参加がない年は、1部の8位と2部の1位が1部ライセンスを保有していた場合に限り自動入れ替え、1部7位と2部の2位(または2部の1位が1部ライセンスを保有していなければ1部の8位と2部2位)の間でホームアンドアウェーによる入れ替え戦を行う。

 

アジアリーグは、当初の数年間は新しい日本リーグのその年のシーズン終了後、アジア近隣諸国の中国、韓国など複数の国のその年のリーグ戦成績上位チーム(2-3チームづつ)を交えて、基本的に開催地を持ち回りの集中開催による方式を取り入れ、最終的にある程度アジアのアイスホッケーリーグの国内リーグが整備されたときに、サッカーのアジアチャンピオンズリーグ(ACL)に倣い、国内リーグと並行して、本格的な国際カップ戦という位置づけをなすようにリニューアルを図る。

 

プロ選手も可能な限り容認しつつ、選手のキャリア形成のため、スポンサーの企業・団体へのチームからの出向社員としての勤務(主にホームタウンの地元企業・団体への派遣)や、日本代表の強化期間中は出向先企業からの給与支援など、競技面と就労・生活面双方での充実化を図り、また地域の社会との連携も図る新しい形のプロアイスホッケーリーグを目指す。これが実現することで、Jリーグやリーグワンなどと合わせて冬場のスポーツ観戦の幅を広げるきっかけ、またアイスホッケーを地道ながら世界と互角に渡り合える実力を試す場を作る機会にもなる。