パリオリンピック出場をかけたバレーボールの事実上の世界最終予選を兼ねたネーションズリーグが5月から開幕する。男子はすでに昨年のワールドカップをもって上位2か国に出場権が与えられる厳しい枠を制し、パリへの切符は手中に収めたが、女子は惜しくも3位に終わり、このネーションズリーグで上位5か国(このうち、アジア最上位は無条件で出場可能)に与えられる最後の切符をかけることになる。

 

ところで、バレーボールの世界規模の大会は、このネーションズリーグ・オリンピックの他に、世界選手権とワールドカップが存在している。以前はワールドカップは世界選手権と同じく各国持ち回りだったが、1977年以後は原則前回の夏季五輪の翌年の開催、1991年以後は一部の年度を除き五輪予選を兼ねて五輪の前年で行われて今日に至っているが、昨年のワールドカップはその世界予選の一部として組み込まれていたため、世界の上位強豪国が集まる従来のそれとはまったく違う性質となっていた。

 

しかも1977年以後のワールドカップは国際バレーボール連盟(FIVB)の公式戦でありながら、日本での恒久開催。それもかつて「アタック№1」というアニメを放送し、その成功を原資に春高バレーを定着させたフジテレビ・産経新聞のバックボーンによって長年にわたり日本でのワールドカップが定着し続けられていた。だが、この度、世界選手権が西暦奇数年の2年に1度のペースでの開催に移行することになり、おそらく2027年の大会はその次のロサンゼルス五輪の最初の世界予選となることから、ワールドカップの開催の余地がなくなる可能性が高い。

 

ただ、ワールドカップというのは、サッカーやラグビー、バスケットボールのフル代表や各世代別の世界選手権など、スポーツの分野においては野球ののフル代表(ワールドベースボールクラシックやプレミア12)、ウィンタースポーツ(スキー、スピードスケートなど)のように世界選手権とワールドカップを別々(特にウィンタースポーツは世界規模のサーキット大会をワールドカップとしている)にしている大会を除けば概ね「世界選手権=ワールドカップ」と位置付けられており、どちらが真の世界一決定戦かわかりづらいというファンも多い。

 

しかもバレーボールはワールドカップ・世界選手権とも歴史が長い(世界選手権が1949年、ワールドカップは1965年)ため、記録上、特にワールドカップは日本での恒久開催が半世紀も続いていたということや出場国数の違いなどもあるため、性質的に単に世界選手権をワールドカップに統合することでその記録を扱うことは難しいので、完全にワールドカップをバレーボールの世界からなくすことになる可能性は高い。単にワールドカップを世界選手権に統合するというのは難しいにしても、真の世界一を決定する大会という点での整理統合はしておいたほうがいい。

 

2年に1度の世界選手権ということでのバレーボールファンの観戦の価値観、特に次回からはサッカーと同じく32か国が出場するため、世界選手権出場のための大陸予選のハードルは低くなるかもだが、4年に1度、五輪前年の大会は世界予選を兼ねた大会となる可能性も高く、五輪出場というハードルは高くなるかもしれない。

 

今回のパリ五輪出場のフローとしては、開催国フランス以外の11か国については、

(1)2023年9-10月に行われた世界予選で上位2か国づつ×3組=6か国

(2)2024年5-6月のネーションズリーグの成績によって反映される世界ランキングで、すでに出場権を獲得している国以外の仲での上位5か国。ただし(1)で出場権獲得国がなかった大陸、この場合は男子がアフリカ、女子はアジア・アフリカについては、ネーションズリーグの最上位国についてはその大陸枠の扱いで出場できる

という形になっていた。

 

僕は世界選手権での五輪出場のフローとしては、バスケットボールのワールドカップ(2023年男子・日本・フィリピン・インドネシア)の仕組みを参考にしたほうがいいかなと思う。このバスケットワールドカップから五輪出場の決定のフローとしては、フランス以外のまず7か国をアメリカ大陸とヨーロッパから各2か国、アジア・アフリカ・オセアニアからは各1か国を予選リーグの最上位の成績を上げた国が優先的に出場権を与え、残りの次点国(大陸により3-10か国の24か国)は7月の五輪直前に行われる世界最終予選(6か国×4組)で出場権をかけるというプロセスだった。

 

これを参考に、32か国で争う場合の想定として、2回の予選リーグ+上位8か国程度のノックアウトラウンドと考えて、

・1次予選=32か国を世界ランキングなどに基づいて4か国づつ8組に分けて1回総当たり3試合。2位までの16か国が2次リーグ進出

・2次予選=1次予選を勝ち抜いた16か国を近接する組、例えばA組とB組の4か国とし、このうち同一組に属する国同士は1次予選の成績をそのまま持ち越し、これプラス別組の2試合と合わせた3試合の成績を基として決定し、ここで上位2か国=8チームが決勝トーナメント進出

 

この1・2次予選リーグの成績により、それぞれの大陸の最上位国(次回の五輪ホスト国は開催国枠なので除く、かつオセアニアはアジアに含む)の5か国が世界選手権からの五輪出場権を得ることにし、残りの6か国を五輪当該年のネーションズリーグによって、決勝ラウンドに進出する国(すでに獲得した国が決勝ラウンドに出た場合は、予選敗退国の中での勝敗やセット率を加味して補充決定)に出場権を与えるというやり方にしたほうが分かりやすいかと思う。

 

また世界選手権の出場についても各大陸選手権(アジア枠はアジア選手権)の上位入賞国を優先的に出場できるようにし、各大陸ごとの選手権から世界へという流れをわかりやすくしたほうが、ファンの興味を引くことにもなる。