この度の大相撲初場所で同点優勝決定戦に持ち込まれ横綱・照ノ富士に惜しくも敗れたものの大健闘した琴ノ若が大関に昇進した。日本人の新大関は御嶽海(2022年)以来2年ぶりだという。

 

大相撲の国際化、日本発祥のスポーツを世界的に広めようという思いで、外国(特に日系人が多いアメリカ大陸)から入門する外国人力士が圧倒的に増えたが、ここ数年来はモンゴル出身が多く、相撲協会のサイトによれば、照ノ富士、大関・霧島、豊昇龍を筆頭に、21人が入門。その他、距離的に近いロシア、ウクライナ、中国などの力士が存在する。

 

親方株を手にするには日本国籍に帰化しなければならない。そのため、朝青龍や白鵬なども、日本人に帰化して横綱で活躍し、白鵬は現在の宮城野親方である。外国人枠については2002年に「外国の力士は1部屋1人限り」としていたが、外国からの帰化を意識した影響もあってか、在日外国人の入門が増えたことから、2010年に「外国出身力士は1部屋1人限り」と規制を強化されてしまい今日に至っている。よって現有力士が帰化したからと、新たな外国人・ないしは外国出身の帰化力士は入門できないのが現実問題だ。これは時代に逆行している。

 

純血日本人力士を育てたいという意図があるのはわかるが、外国から留学したり、あるいは日系人やハーフ・クォーターも増えていくなど、国籍のマイノリティー意識が高まりを見せている中で、実質的に純血日本人だけで相撲を取らせるというのはいかがなものだろうかと僕も思う。強い日本人力士がここ数年目立ってきたのも事実であり、優勝争いに加われる実力も増えてきたことを思うと、帰化を前提とした在日外国人・日系人やハーフ・クォーターにもチャンスを広げるべきで、それを世界の相撲として普及させ、来る次の日本でのオリンピック開催で追加競技として認定されるようにしたほうが一番の施策だと思える。

 

プロ野球やJリーグでも、在日外国人に対する規制が緩和され、日本人と同等扱いされる規定もある。

 

プロ野球の場合、現在は1軍の出場選手登録は4人まで(但し投手:野手の比率がどちらか一方で4人:0人は不可で、どちらかが3:1か2:2にすることが義務付けられている)であるが、育成枠を含めた支配下登録の人数制限はない。アマチュア時代に中学校以上を日本で3年以上経験しているか、大学に4年以上在学、または日本在住5年以上で社会人野球チームに3年以上在籍していること、また現役選手でも日本のフリーエージェント資格を持っていれば日本人と同じ扱いを受けられる。

 

Jリーグは現在は外国籍選手については原則J1:5人、J2・J3:3人までだが、それ以前は在日外国人を1人、日本人と同じ扱いにしていた時代があった。ただ選手の支配下登録については現在外国人の登録上限が定められていないため、トップチームの試合出場の制限こそあるが、育成目的で補強し、下位リーグのチームに育成型移籍という形でプレーする選手も少なくはない。

 

ラグビーのリーグワンも事実上外国人枠の人数制限がない(ラグビーは出身地に関係なく、その国内に居住していれば外国籍でも代表に選ばれることがある特異なシステムである)。リーグワンでは、ここ最近ワールドカップを経験したスター選手がプロ契約で入団する選手も増えてきた。スーパーラグビーというオーストラリア・ニュージーランドなどの太平洋諸国のリーグとの日程重複が少ないため、事実上レンタル移籍みたいな形ではあるが。

 

バスケットボールのBリーグは大相撲にやや似ている。純外国人枠(帰化申請中も含む)が試合登録3人、同時出場2人で、また帰化した外国出身者とアジア枠で別にどちらか1人同時出場ができるようになっている。これも純日本人を育てたいという思いがあるのかもしれないので、若干逆行しているが、それでも日本はパリ五輪に48年ぶりの自力五輪出場を果たしたのだから立派だといえる。

 

大相撲でも、在日外国人・ないしはハーフ・クォーターなどの外国由来の血脈を持つ力士でも、一定の審査を経て、例えば基から日本で生まれているか、日本で義務教育を修了している学生、あるいは帰化申請をして日本に帰化し、将来親方株を取得することを目標にする力士であれば、日本人と同じ扱いの待遇を用意するべきと思う。またその力士には親方襲名の際、一定期間(本場所との日程の関係もあるので数か月の短期的にはなるが)、技術研修親方として、その力士の母国での相撲普及のための取り組み、少年少女への指導やテレビ中継の普及などの国際化のためのプロジェクトに参加させるなどを義務付けることで、外国人にルーツを持つ力士の相撲への関心拡大、普及に尽力させるべきだと思っている。